2018年10月11日 第41号
Tojo's Restaurantは1988年に現在の店舗より4ブロックほど東にあるビルの2階にオープン、2007年に現在の場所に移転した。その創立30周年を記念をする祝賀会が、10月7日、バンクーバー市ウエストブロードウェイにある同店で開かれた。常連客を中心に約280人が招待され、バラエティに富んだ食事や日本酒やワインなどを楽しんだ。
左から、東條英員さん、アンガス・アンさん、ウェン・ダンさん、ピノ・ポステラーロさん。ポステラーロさんは、料理をサーブする役もこなし、有名シェフということを感じさせない気軽さ
おいしい食事で笑顔がこぼれる
ギター奏者の中島有二郎さんが奏でるブラジリアンギターの柔らかな音色が流れるレストラン内に、続々と招待客が入ってくる。今回招待されたのは長年通い続ける常連客がほとんどとのこと。オーナーシェフである東條英員さんと親しげに言葉を交わす姿が見られ、Tojo's が多くの人に愛されてきたのがわかる。また、この祝賀会のために、東條さんの兄、姉、妹さんも日本から来ていた。
この特別な機会に、メトロバンクーバーの有名レストランのシェフが応援に駆けつけ、それぞれ料理を提供した。Cioppino’s Mediterranean Grill&Enotecaのオーナーシェフ、ピノ・ポステラーロさんは、うま味を効かせた豚バラ肉の煮込み、MaenamやLongtail Kitchenなどのオーナーシェフであるアンガス・アンさんが、カレーソースの上にマグロのたたきやカニ肉などを乗せた一品を、そして、Araxi Restaurantでエグゼクティブシェフを務めるウェン・ダンさんが、カモ肉のローストを用意した。Tojo's からは、オードブル数種の他、祝いの席にぴったりな美しい寿司が並べられた一品が供された。また、ロゼのスパークリングワインや各種の日本酒、ワイン、クラフトビールなどもふるまわれ、祝賀の雰囲気を盛り上げた。
常連客への感謝をこめて
祝賀会は本間しのぶさんとジョーディ・ライリーさんによる活気あふれる太鼓の演奏で幕を開けた。フードスタイリストでジャーナリストでもあるネーサン・フォンさんによる軽快な司会のもと、祝賀会に協力したシェフが挨拶、さらに東條さんが常連客への感謝の気持ちを述べた。そして、東條さん、ポステラーロさん、マーク・ラングドンさん、ポール・ベルセレーンさん、トレバー・スキレンさんが鏡割りを行い、日本酒がふるまわれた。
食事を楽しんだ後、東條さんと20年以上の付き合いだというポステラーロさんや、40年以上、東條さんのレストランに通っているというラングドンさんとベルセレーンさんがスピーチ。各国の要人やセレブがバンクーバーを訪れた際に料理を提供するほどの東條さんが、自身のレストランへ通う常連客をとても大切にもてなすと話した。実際、Tojo'sの料理の素晴らしさもさることながら、東條さんの顧客への気配りや親しみを込めて迎えてくれる様子が何よりうれしいと話してくれた男性客もいた。祝賀会の最後にはケーキカットが行われ、Sweet-e’sのデザートやCoconamaの生チョコが楽しい食事の締めくくりに供された。
顧客の喜ぶ顔が原動力
東條さんは30周年の祝賀会について「(Tojo's 以前から数えて)30年以上の常連さんがいらっしゃるので、感謝の気持ちを示したいということもあり、友達でもあるシェフからも、なにかやろうと声をかけられていたので」と経緯を語った。
今後について尋ねると「若い人たちを育成していきたいです。日本人に限らず、いろいろな所から勉強したいという人が来るんです。名の知られたシェフも勉強させてくださいと来たりします。そういう人たちはよく調べていて勉強する意欲が高いんですね。(食の世界は)終わりがないというか、幅が広い。だから、他の所と同じものではなくて、各店でのオリジナルを作っていったら伸びていくのかと思います」と話す。
「私は仕事が好きなんです、料理するのがね。お客さんが喜んでくれるからうれしくなるんです。楽しいですよ」と語る東條さん。自身が料理したものを顧客が喜んでくれる笑顔が、東條さんの原動力であり、Tojo's Restaurantへの高い評価につながるのだと感じた。
(取材 大島多紀子)
スピーチをする東條英員さん。右側は、司会のネーサン・フォンさん
鏡割りをした東條英員さん、ピノ・ポステラーロさん、マーク・ラングドンさん、ポール・ベルセレーンさん(左から)
本間しのぶさん(左)とジョーディ・ライリーさんによる迫力ある太鼓演奏