2018年10月4日 第40号

“人生100年”ともいわれる長寿社会の今、北米ではもちろん、日本でも「充実したシニアライフをいかになすべきか」の研究、提言が盛んに行われるようになってきた。その真っただ中にいて、ホットな事例を収集し、分析をしているサイモン・フレイザー大学の和田峰子博士(リハビリテーション)を講師に招き、9月28日、隣組オフィスで講演会が行われた。健康的な身体はもちろん、精神的な充実が欠かせない。それは、人とのつながり…話す相手がいる、いや、ぬくもりを感じ合える人がいる…その相手探しに最近注目を集めているのが『オンラインデート』。具体的なヒントの紹介に、集まった30名を超えるシニアの参加者が耳を澄まし、目を輝かせていた。 そのセミナーの概要を要約してご紹介したい。

 

関心が高く満席状態になった会場

 

ハッピーなシニアライフを獲得するための秘策はもう一歩先にある

 アメリカのRowe &Kahn氏がまとめた“Successful Aging”(1987,1997)によれば、「病気や障害を持たない」「身体的、認知的機能の維持」「活動的な生活、社会参加」が必要とされてきた。しかし、その後の調査で、その優等生的回答で、『身も心も満足できる』と答えた人は、わずか10から15%に過ぎないことがわかった。ほんとうにハッピーなシニアライフは、もう一歩先にある。

 特に、日本社会ではタブー視されてきた高齢者がおしゃれをしたり、異性との交際やセックスなどは『いい年をして…』と切り捨てられ遠ざけられる。そんな現実の固定概念への挑戦が始まった。

 

人生の締めくくりをハッピーにするために さあ、踏み出そう!「出会いを求めて」

 異性、同性に限らず、新しい出会いを求めて心躍らせれば「おしゃれになる」のは必然だ。姿勢も良くなり、活発になる。「恋すれば、美しくなる」というのは、金言だ。心がときめけば、身体的な面や認知的機能も向上しうるのではないだろうか。

 出会いを求める方法として和田先生が提唱したのが、『オンラインデート』。IT技術の進歩で、交際相手と気軽に知り合うことができる機会が飛躍的に高まった。今、そのサイトにさまざまな形で、携帯電話、スマートフォン、タブレット、PCなどでアクセスできる。若い人たちの“出会い系サイト”ばかりではなく、シニア世代の“出会い系サイト”が盛んになってきたのが近年の特徴だ。これは結婚やセックス目的ばかりではなく、メールやツイッター、SNSなどのさまざまなIT技術によって“話し相手”を見つけることができる。お互いに顔を見ながら話もできる。遠く日本に住む人とさえ交際できる。齢を重ねることで、会話の相手も付き合う相手も少なくなっていくものだが、こうした手段も大いに活用すべきというのが、和田先生おすすめの「人の絆の拡大法」だ。

 このとき、重要なのが自己表現テクニック。自らの魅力をどう伝えるか。好意を抱かせるメッセージをどう表現するか。この点についても和田先生のもとで調査が行われ、さまざまなポイントが挙げられている。  要約すると、特に男性に多い「社会的地位や、収入などの権威的な面や真面目さばかりを強調したりするのではなく」、 ユーモアや失敗談なども気軽に話せる“ちょい悪”の若々しさ、カジュアルな服装を心がけたい。また、女性も、おしゃれに気を使い、経済的にも自立していること、ポジティブな考えをする、などが挙げられている。

 さて、これを現実にどう表現するか。とにかく、そうしたネットを開き、数多く見て研究し実践する。失敗を恐れず、トライ・アンド・エラーを繰り返すことが上達の秘訣ではないだろうか。まず、これまでの常識や固定概念に縛られず、ハッピーなシニアライフに挑戦する心意気を持つことから始めたい。筆者の身近な人のお母さんが、養護施設で暮らすうちに恋に落ちたという。そのご本人ばかりか近親者もみんなが喜び、祝福され、幸せで、認知症になるでもなく、恋心を抱いたまま最期を迎えられたという。なんと幸せな人生だったのだろうか。

(取材 笹川守)

 

講演中の和田先生

 

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