2018年6月21日 第25号
ウィルチェアー(車いす)ラグビーの「カナダカップ2018」が6月14日から17日まで、ブリティッシュ・コロンビア州のリッチモンド市にあるオリンピックオーバルで開催された。
ボールを取りに行く池透暢選手
リオデジャネイロ(リオ)・パラリンピックで銅メダルを獲得した日本は、上位チームを破り見事に準優勝の成績をおさめた。8月の世界選手権や2019年に日本で開かれるワールドチャレンジ、2020年の東京パラリンピックに向けて弾みをつける勝利となった。優勝はアメリカで、開催国のカナダも4位入賞を果たした。
この大会は2004年から2年に1回開かれている国際大会で、今年は世界から6カ国(日本、カナダ、アメリカ、オーストラリア、スウェーデン、デンマーク)が参加し、実力を競い合った。
1977年にカナダで考案されたウィルチェアーラグビーは、ボールを奪い合うときなど車いす同士が激しくぶつかり合い、時には転倒することもあるアグレッシブなスポーツだ。
試合方法はバスケットボールと同じ広さのコートで、両手足に障害のある選手が4人対4人で対戦する。ドリブルやパスをしながら、ボールをゴールラインへ運び総得点を争う。試合時間は8分間のピリオドを4セット行い、勝敗を決める。
選手は障害の程度によってポイント(0.5から3.5まで)があり、コートに入る4人の合計ポイントは原則8点を超えてはならない。
攻撃時はフェイントをかけながら相手選手を抜き、絶妙のタイミングでパスを出す。守備もフォメーションを作りながらブロックするなど、緻密な連携プレーが要求される。
カナダ代表チームが東京パラリンピックの事前キャンプ地に予定している青森県三沢市からは、市長をはじめとする視察団も日本から来て応援。種市一正市長は初めての試合観戦に「スピードがあって、すごい迫力ですね」と感動した様子だった。
アメリカ・アトランタ在住のヨシコ・ロブネットさんは「日本チームが数年前にアメリカへ遠征した際にお世話をして、その時から試合の素晴らしさが病みつきになりました」と応援メッセージが書かれた横断幕を持って駆けつけた。
全日程を終えて、ケヴィン・オアー・ヘッドコーチは「この大会は世界選手権の前哨戦なので、いろいろと試す良い機会でした。改善点はスペースの使い方、一対一での競り合い、高いレベルの試合でリカバリーができるライン(選手の組み合わせ)の入れ替えなどです。東京パラリンピックに向けては選手層を厚くすることと、ミッドポインター(中程度の障害を持つ選手)の強化です」と今後の課題も語った。
キャプテンの池透ゆきのぶ暢選手は「リオ・パラリンピックで金(オーストラリア)・銀(アメリカ)のチームに対して延長戦までもつれ込めたのは、日本チームの成長の証しだと思います。そして世界ランク1位のオーストラリアに勝てたことは大きな収穫でした」と今大会の感想を話し、「私たちはトップレべルで戦っていますが、未完成なチームです。まだ認知度が高いとは言えない車いすラグビーですが、残り2年間の活動や結果で、日本の五輪会場を満員にして金メダルを取りたいです」と東京パラリンピックへの抱負を力強く述べた。
(取材 古川 透)
カナダのディフェンスをかわしてゴールラインへ向かう池崎大輔選手
転倒するアメリカのジョシ・ウィーラー選手
日本チームのケヴィン・オアー・ヘッドコーチ