2018年4月26日 第17号

日系人強制収容から75周年を迎えた2017年。強制収容を経験した人々が高齢化し、人々の記憶からこの事実が薄れていく中、75周年を機に日系の遺産として事実を後世に残すプロジェクト「日系人強制収容75周年記念表示プロジェクト」が進められている。

主導しているのは日系人遺産プロジェクト委員会。今回は代表5人に話を聞いた。

 

第1回タシメ(サンシャインコースト)での記念式典の様子。2017年10月27日。(Photo provided by Japanese Canadian Legacy Project Committee, Photo courtesy of John Endo Greenaway)

 

日系人遺産プロジェクト委員会

 今回インタビューに応じてくれたのは、日系人遺産プロジェクト委員会を代表する4人。委員長のローラ・サイモトさん(バンクーバー日本語学校並びに日系人会館理事)、リンダ・リードさん(日系文化センター・博物館)、ハワード・シモクラさん(タシメ歴史協会)、チャック・タナカさん(グリーンウッド日系レガシー公園設立)。それぞれに地域の日系コミュニティと深いつながりを持ち、強制収容を経験した家族を持つ。

 さらに今回はタシメ(現サンシャインバレー)で日系人強制収容所跡地にタシメミュージアムを設立したライアン・エランさんも加わった。

 プロジェクト委員会設立のきっかけは2016年に発表されたブリティッシュ・コロンビア州政府による日系人歴史遺産登録事業だった。

 前年にパイロット事業として中国系の登録を終えた州政府は、第1回の正式事業として日系人歴史遺産登録を発表した。これに登録されれば、政府公認史跡として認定されるため、この機会に日系コミュニティが協力し多くの歴史的な場所を提案した。一般公募によって集まった提案数は264カ所。その後、政府と日系コミュニティとの協力と話し合いにより、56カ所が正式に登録された。

 これをきっかけとして委員会が創設され、プロジェクトが始まった。目的は、登録された史跡に、記念の表記板を設置すること。サイモトさんは「州政府公認として史跡が認められることは非常にいいこと。でもそこに何もなければ誰もそこが日系人収容所跡地とは分からない。だからここに確かに日系人が収容されていたと分かる記念の表示板を設置したいと政府に働きかけました」と説明した。それが日系社会にとって長年の念願でもあったという。シモクラさんも「この機会を無駄にしたくない」と語った。

 そしてこの56カ所から日系人収容所関連の場所を選び、さらに全所に設置は無理ということで、隣接する収容所を1つのグループにまとめて6グループとして、1グループ1カ所に設置。それにロードキャンプ(日系人が駆り出されたトランスカナダハイウェイ建設場所)3カ所を含めた9カ所に記念の表示板を設置することになった。そのうち8カ所で記念式典が行われる。

 第1回記念式典は昨年10月29日にタシメで行われた。BC州政府からは担当省の運輸及びインフラ省からクレア・トレベナ大臣が参加。ようやくプロジェクトが完結へと向かい始めた。

 

日系の遺産として後世に伝えるために

 日系人がカナダ政府によって強制的にBC州沿岸部から100マイル以東の内陸部に移動させられたのは1942年。強制収容は戦争が終わった4年後の1949年3月31日まで続いた。

 水も電気もない場所で生活することを強いられ、若い男性はロードキャンプに駆り出された。経済的に自己負担することを望む家族は自立収容所で家族共に暮らしたが、政府負担の収容所では、家族がバラバラになることも多かったとシモクラさんは語った。

 しかしこうした事実は、時を経るにしたがって人々の記憶から薄れていく。しかしこれは現代にも通じる教訓を残しているとサイモトさんは言う。

 「日系強制収容は日系人に対する差別が原因です。そして差別は形を変えて現在でも存在しています。私たちは日系人に起こった事実を教訓とするために後世に伝えていく義務があると思っています。そうでなければ同じことが繰り返される可能性があるからです」。

 今回のプロジェクトで設置される表示板には、収容所跡地に写真付きで説明を添えている。ここを訪れた人にその歴史を知ってもらうのが目的だ。

 特に現地の人や子供たちに自分たちが住んでいる町で以前にどんなことが起きたのか知ってもらう機会にもなる。「私たちが望んでいるのは、事実を風化させないこと、そしてそこから何かを学んでもらうこと」。日系人に限らず二度と同じことがあってはならないからと語った。

 

地域との連携で生まれる日系ネットワーク

 記念表示プロジェクトとは別に、それぞれの地域で日系収容に関する事業が進められている。その一つがサンシャインバレーのタシメミュージアム。現存していた収容当時の精肉店の建物を2年前にミュージアムに改築した。

 さらに当時日系人が暮らしていた建物(掘っ立て小屋)のレプリカを建設。寒さが厳しいこの地方で「暖房施設もなくこんな建物で生活していたなんて信じられない」とエランさんは語った。

 現在はバンクーバーから生徒を招くミュージアムへの見学ツアーを行っている。サンシャインバレーはバンクーバーから車で約1時間30分。日帰りツアーが十分可能だ。3月にはコキットラムから2校、バーナビーから1校のグレード10の生徒がミュージアムを訪れた。

 昨年の来館者は約1300人。そのほとんどが75年前ここでどんなことが行われていたか、ミュージアムのドアをくぐるまで知らないという。「だからここを訪れた人に、この建物の意味を知ってもらうのはすごくうれしい」とエランさん。現在は毎週土曜日に開館、夏には週6日開館予定。

 リルエットでは鹿毛真理子さんが中心となって活動を行っている。(鹿毛真理子さんインタビュー 2018年2月22日号掲載)。こうした各地での取り組みと委員会と連携し、日系関連団体が協力し合ってこの活動を進めている。サイモトさんは「日系ネットワークの広がり」と笑う。今回のプロジェクトを通じて日系の輪が広がっていくことを喜んだ。

 

募金活動も継続

 同プロジェクトは表示板の制作・設置などはBC州政府が負担している。しかし記念イベントは委員会が資金を集めている。

 記念式典の経費は第1回のタシメを基に試算。残り7カ所であと約2万ドルが必要という。現在のところ、まだまだその金額には到達していない。

 記念式典では、地域住民の参加に力を入れ、現地の学校の子供たちも招待している。そうした人々をもてなすための食事や飲み物、ちょっとした催しに要する費用や、現地で収容生活を経験した人々を招待するための交通費や滞在費の負担も考えている。

 寄付は日系センターを通して行っている。ウェブサイト、チェック(郵送)、電話での寄付も受け付けている。日系センターへの寄付と区別するために、寄付のときにはプロジェクトのための寄付であることを明確に示してほしいという。さらに、記念式典の特定も可能。リルエットでの記念式典のために寄付したいという指定もできるということだった。

 

収容所跡地ツアーを計画中

 日系ミュージアムでは現在2年に1度、「日系収容所跡地バスツアー」を行っている。昨年行われたため次回は来年の予定。

 リードさんは「今年も行いたかったが難しかった」と語った。しかし今年9月までには記念行事が終了する。来年には大々的にツアーを計画する予定だ。「日系やBC州の歴史を知るにはすごくいいバスツアーだと思う」とリードさん。来年を「お楽しみに」と笑った。

 では今年はというと、「タシメミュージアムへのツアー」を受け付けている。バンクーバーから内陸へと送られる時に一時的に収容されたヘイスティングスパークとタシメを巡るツアー。興味があればぜひと語った。

 

これからの記念式典の日程

5月11日(金)リルエット
6月15日(金)ニューデンバー、スローカン、カスロー(1日に3カ所で記念式典)
7月29日(日)グリーンウッド、ホープ-プリンストン(ロードキャンプ)
9月(詳細未定)レベルストーク-シカモス(ロードキャンプ)

Sunshine Valley Tashme Museum
14781 Alpine Blvd, Sunshine Valley, BC
604-869-7070; This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.

リルエットでの記念式典に関する詳細はこちら
http://centre.nikkeiplace.org/2018/04/24/lillooet-legacy-signage-unveiling-event/

オンライン寄付サイトはこちら:http://bit.ly/2AiWLNN

チェックでの寄付の場合:Nikkei National Museum & Cultural Center 75th Anniversary Legacy Signage Project;6688 Southoaks Crescent Burnaby BC V5E 4M7

電話による寄付:604-777-2122

バスツアー、プロジェクトに関する問い合わせ先
ローラ・サイモトさん:This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.

(取材 三島直美)

  

左から、シモクラさん、リードさん、エランさん、サイモトさん、タナカさん。4月9日バンクーバー日本語学校並びに日系人会館で

 

 

 

今週の主な紙面
8月16日号 第33号

バンクーバー新報は毎週木曜日発行です。

あなたにぴったりの学校がきっと見つかる! School Information…V-3
MOVIES TIME OUT…V-11
ヨガと健康…V-21
TIME OUT(イベント情報)…V-16~17
CLASSIFIED…V-18~22
求人情報…V-4~6

詳しくは8月16日号 第33号
バンクーバー新報をご覧下さい。

配布リストはコチラ