2018年1月1日 第1号

昨年10月、『バンクーバー国際音楽コンクール』(VIMC)がバンクーバー市内ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)音楽学部で開催され、中国およびバンクーバーでの予選ほかビデオ審査を通過した約115人がピアノ、弦楽器、声楽部門で決勝進出。シアトル在住の田口拓実さん(16)が弦楽器部門でグランプリ優勝、当地在住の庄司蛍乃佳さん(15)が弦楽器部門で銅賞を受賞した。注目のティーン演奏家にインタビュー!

 

庄司蛍乃佳さん

庄司蛍乃佳さん(写真提供 大竹美弥さん)

 

9歳のときにお母さんに「ハープをやってみたい」と言ったそうですが、それまでどこかでハープを聴いたことがありましたか?

 ハープの曲をサウンドトラックや子供向け映画で聴いていました。

ハープの魅力、むずかしさってどんなところでしょうか。

 音色、楽器自体の美しさ。すべてのハープ楽曲がきれいであること。ハープのサイズによって曲を弾き分けられることです。

 むずかしさはペダルチェンジ、弦楽器なので音の調律がむずかしいこと、持ち運びが大変なことなどです。

人前で演奏するのは好きですか?

 はい。演奏の伝わる瞬間、聴き手のリアクションがライブであることが好きです。

11月にはメキシコで開催されたハープの世界大会に出場しましたね。

 今回は賞は受け取らなかったけれど、いろいろな国の人と出会い、素晴らしい環境でマスタークラスを受け、貴重な経験になりました。

現在の練習時間は?

 1日に2〜3時間です。

ハープのほかに、好きなこと、得意科目は?

 ミュージカル。言語(特にフランス語)が好きです。

音楽を続けていて人間的に学んだことはありますか?

 態度に気をつけること。ポジティブであること。他の人たちに感謝、尊敬すること。経験を楽しむことなどです。

尊敬する演奏家は?

 大竹美弥、イザベラ・モレッティ、エリザベス・ハイネン。みんなハーピストです。

将来の夢は?

 まずは音大に入ること。ミュージカルのピットオケで弾いてみたいです。

 献身的で情熱的な演奏家になりたいです。

 

昨年10月にはブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市のスティーブストン仏教会でチャリティーコンサート(メディアスポンサー バンクーバー新報)を開催した

昨年11月、メキシコで大竹美弥先生(左)と国立芸術宮殿でオーケストラへ(写真提供 大竹美弥さん)

 

庄司蛍乃佳(しょうじ・ほのか)Honoka Christina Shoji
9歳よりハープを始める。2014〜2017年キワニス音楽祭金賞。2017年キワニス音楽祭トム・リー・エクセレンス ミュージックアワード受賞。
2017バンクーバー国際音楽コンクール(VIMC)銅賞。2013年よりバンクーバー音楽院オーケストラ在籍中。

 

 

田口拓実さん

田口拓実さん(写真提供 田口拓実さん)

 

いつごろから本格的なレッスンを始めましたか?

 2歳半から東京でスズキの教室に通い始め、シアトルに越して6歳からユース・オーケストラに入りました。11歳でスズキの全課程を卒業し、シアトル・シンフォニーでアシスタント・コンサートマスターをされているサイモン・ジェームズ先生について5年目になります。

 先生がオーケストラでタキシードやテール姿でオケを率いて演奏されている姿に、音楽で仕事ができたら楽しそうだと思い始めました。

バイオリンをやっていて大変だったことは?

 弾けば弾くほどできていないところが見えてきてフラストレーションがたまることです。また、空手、チームスポーツ、トラック&フィールドなど、大好きなアクティビティをあきらめなければならなかったことは辛かったです。

これまでのコンクール出場は?

 スズキメソードを卒業する直前にスズキの世界大会のコンチェルト・コンペティションを勧められ応募したら通ってしまい、長野県松本市で行われた第16回スズキ世界大会でプロのオーケストラとメンデルスゾーンの協奏曲を演奏させていただきました。

 メニューイン国際コンクール(2016年、イギリス・ロンドン)ではピアノ伴奏の方が日本人で、完璧にサポートしてくださったので、とても楽しく演奏できたことがうれしかったです。

 コンペティションは勝ち負けよりもパフォーマンスをさせていただく機会だと思うようになったので、バンクーバー国際音楽コンクールでは、とても楽しく弾けてハッピーでした。しかも、すばらしい賞をいただけたことはとてもうれしかったです。

人前で弾くとき緊張しますか?

 毎回とても緊張します。ステージの上に立ってから時間をかけて深呼吸をしたり、まわりを見回したりして、気持ちが落ち着いてから弾き始めるようにしています。

愛用の『1939ピラット』はどんな楽器ですか?

 12歳のときワシントンDCから取り寄せてもらったものです。この楽器はストラディバリウスの『エンペラー』というバイオリンのコピーで、まったく同じ寸法に作ってあるそうです。とても明るい音がする楽器だと思います。

現在の練習時間は?

 学校の宿題が多いときや、テストの前は1日30分位ですが、週末などに5~6時間弾く日もあります。それ以外の時間で好きな演奏家の演奏を聴いたり楽譜を見たり、音楽の本を読んだりしています。

影響を受けた演奏家、将来の夢は?

 一番長い間影響を受けているのはヤッシャ・ハイフェッツさんです。小学校2年生の時に自分の選んだ偉人のことを調べて発表するプロジェクトがあり、ハイフェッツさんのことを調べたことを覚えています。アーロン・ロザンド先生の録音も大好きです。現役の方ではシアトル室内楽ソサエティの芸術監督でカナダ人のジェームズ・エーネスさんが大好きです。

 今はとにかくたくさん勉強して、将来は何かの形で演奏や音楽に関わる仕事をしたいです。

 

『バンクーバー国際音楽コンクール』(VIMC)弦楽器部門でグランプリ優勝した田口拓実さん

『バンクーバー国際音楽コンクール』(VIMC)ガラコンサートでは『カルメン幻想曲』(ワックスマン)をドラマチックに演奏(撮影 O.K. Photo)

 

田口拓実(たぐち・たくみ):
2001年に米国ノースカロライナ州ダーラム市で生まれる。2歳よりスズキ・メソードでバイオリンを始め、11歳で卒業後はシアトル・シンフォニーのアシスタント・コンサートマスター、サイモン・ジェームズ、およびピアニストのヒロ・デービッドの指導を受けている。好きな音楽のジャンルは室内楽。学校では数学と科学が得意で、音楽以外の趣味は読書とチェス。6歳から10年間通った書道は特待生である。

 

(取材 ルイーズ阿久沢)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。