2017年12月21日 第51号
12月1日、JALTA日本語教育振興会の企画による帰国子女枠大学入試説明会(メディアスポンサー:バンクーバー新報)が、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で開かれた。
帰国子女の大学入試制度を説明する今井孝久さん
変わる日本の大学入試
海外に滞在し、海外での教育を受けてきた学生には日本の大学入試制度が不利に働くことから、その緩和策として制度化されてきた帰国生入試。それが近年、帰国生を外国語の運用能力や異文化での生活体験を持つ貴重な存在として、日本の大学が積極的に迎え入れる方向へと転換してきている。
また日本の大学入試は、2020年から現在のセンター試験に代わり「大学入試共通テスト」の導入が検討されている。その背景には、社会構造の変化がある。グローバル化が進展し、人工知能技術をはじめとする技術の革新が進み、社会構造が急速に変化。そうした予見困難な時代の中で、新たな価値を創造する力を育てる必要性がある。文部科学省では、学力の育成方法とともに試験制度を変革する理由を、このように説明している。
英語は4技能を評価する方向へ
現在、その試験変革の方針として、知識や技能だけでなく、思考力や判断力、表現力も評価の対象に入れること、また主体的に多様な人々と協同して学ぶ態度も評価対象に加えていくことが掲げられている。実際の試験では、これまでなかった記述式の問題の導入や、英語の民間の試験を利用し、読み書きの能力以外に、聞く、話す技能の評価を取り入れることが検討されている。
日本で学びたい海外在住者に向けて
そうした背景の中、海外から日本の大学への入学を考える際、何を知り、どう準備していったらよいのだろうか。「日本で学びたい」、「日本の会社で働きたい」と希望する子供を持つ保護者を主な対象として、日本から専門家を招いて開催したのが本説明会だ。バンクーバー新報も、この説明会のメディアスポンサーとなり、多くの人に、この情報を伝えるべく広告に努めた。
来加した専門家は、日本で大学受験や留学準備に向けての英語指導を基幹事業としながら、海外帰国生教育センターを運営するトフルゼミナールの今井孝久さん、有賀淳子さん。
説明会の中で二人は、日本の大学の帰国生入試の概要、AO(アドミッション・オフィス)入試、大学別の入試情報を解説。帰国生入試という入試形式が特別に用意されている大学のほかにも、AO入試という形で、ほとんどの大学が帰国生を受け付けていること、入学時期には4月入学と9月入学があり、それぞれ出願時期も違い、早い場合ではカナダの高等学校の最終学年ではなく、一学年前に入試に向けての準備を一通り済ませなければならないことなどを説明した。
試験内容としては、文系の場合は、英語、小論文、面接の、理系の場合には数学、理科、小論文、面接の準備が必要となる。
ちなみに、AO入試とは、個々の大学が学生に求める人物像をまとめたアドミッション・ポリシー(大学の入学者受け入れ方針)を明らかにして、入学希望者の学びへの意欲や関心、適性を重視して選考する入試のこと。アドミッション・ポリシーを定め、運営する大学の部署をアドミッション・オフィスと呼ぶことから、AO入試と呼ばれている。
カナダの学校での成績(GPA)の平均が、A(4.0)なら海外から直接トップ大を目指せる。A(3.5)なら東京大学、京都大学の帰国子女枠、B(3.0)でも早稲田大学、慶応大学、ICU国際基督教大学を目指せるという。
説明会では、身体に障害のある学生のための入学時の特別な制度があるかなどの質問が寄せられた。
(取材 平野香利)
JALTAの中島範昭さん(左)が司会を担当