外国語教育の充実と地域レベルの国際交流の進展を目的にJET(The Japan Exchange and Teaching)プログラムが開始されたのは今から25年前。小・中学校で働く外国語指導助手のほかに、市役所などで働く国際交流員、スポーツ国際交流員の役割がある。招致国も当初の4カ国から39カ国へと増え、これまでに4330人が参加している。
福島で東日本大震災を体験
この夏の帰国者の中に、福島県滞在者がふたりいた。福島県郡山市で英語を教えていたロレッタ・シウさん(26)は3月11日、会議の最中に地震を体験。水道もガスも止まった中、両親の強い勧めで韓国に1週間だけ避難したあと、再び日本に戻った。「まわりの人たちがとても冷静に行動している姿が印象的でした」と話す。日本には合計3年滞在した。
福島県会津若松市に滞在したケルヴィン・ポー(25)さんは「(僕が)1年で帰ってきたのは地震の影響かと聞く人がいますが、サイエンス・リサーチの仕事に戻るためでした。1年の契約はちゃんと終了しましたよ」と愛嬌良く笑った。ケルヴィンさんは本紙8月18日号で紹介した福島県在住のJET国際交流員、ケビン・シェンさんと一緒に相馬市の原釜幼稚園でボランティアした仲間のひとりだ。
被災地の写真展を計画中
ロレッタさんもケルヴィンさんも片言の日本語なら理解するが「地震発生後“放射能”とか“原発”とか今まで聞いたことのない言葉が頻繁に聞かれるようになり、戸惑いました」と平常な生活から一変した災害体験を語った。
90年代にJETで福島県相馬市に滞在したJET同窓生のクリスチャン・ハンセンさんは、福島にたくさんの友人と思い出を持つ。JETAABCでは、このような同窓生による災害前の写真と、今年被災地に訪れて撮影した写真展『Changing Tides: A Collective Photo Exhibit of Tohoku』を1月14日から3月11日までナショナル日系博物館で開催予定とのこと。
日本各地で貴重な体験
出発前に福井県内に派遣されると聞かされたが、地図で捜してもその町は見当たらなかったというコリーナさんは、地方の日本文化に触れる貴重な体験をした。JETを通して高校生に教えるやりがいを知り、帰国後UBCに入学。ハイスクール教師の資格を取るため目下勉強中だ。
一方「私が赴任したのは長崎県にある小さなアイランドでした」というキンバリーさんは、対馬市の温泉浴場で金曜の夜入浴中に出会ったおばあさんとのエピソードを話し、初めて村の人から受け入れられたようでうれしかったと話した。
このあと伊藤秀樹総領事が「今後も日本で築いたコネクションを保ち、草の根外交官として活動を続けてください」とスピーチし、参加者はおいしい日本食に舌鼓を打ちながら歓談した。
(取材 ルイーズ阿久沢)