2017年9月28日 第39号

朝日ベースボール・アソシエーション主催の朝日レガシーベースボール大会が9月3日、バンクーバー市ナナイモパークで開催された。

 

試合終了後に全員で記念写真。2017年9月3日、バンクーバー市ナナイモパーク

 

 この日は午前中から年齢別にチーム分けされた選手たちが対戦。“Asahi”のロゴが入った赤いユニフォームを着て、グランド狭しと駆け回りベースボールを楽しんだ。

 午後には、今年3月「新朝日チーム」として第2回日本遠征ツアーに参加した(当時主に13歳~16歳)朝日チームと、今季から編成された18歳以上の成人チームが「朝日レガシーゲーム」を行った。

 開会式ではアソシエーション会長ジョン・ウォン氏が「今日はバンクーバー朝日のレガシーを復活させる日となりました」とあいさつ。

 始球式をしたグレーター・バンクーバー・ジャパニーズ・カナディアン・シチズンズ・アソシエーション(GVJCCA)会長ロレーン及川氏は、祖父が朝日で投手をしていたエピソードを紹介。「祖父が得意としていたドロップボールは投げられないけど」と笑って無事始球式を終えた。

 試合は、成人チームが序盤に3点を奪ったものの、逆転した新朝日チームが勝利。まだまだ暑い夏の日差しが残るバンクーバーで、楽しい今シーズンの幕開けとなった。

 

上西ケイさんに喜んでもらうために

 新朝日チームは、夏期シーズン中は各チームに所属している選手たちが、そのシーズンを終えた後の秋から編成され、シーズンに入る。そのため新朝日として参加できる大会は少ない。それでも毎年9月下旬に参加している大会がある。ブリティッシュ・コロンビア州内陸部のカムループスで行われる9歳から11歳までを対象とした国際大会だ。猪亦功憲(いのまたあつのり)監督は「カムループスには必ず行っています」と力を込めた。

 その大きな理由の一つがカムループスに住む上西ケイ(功一)さんに、新朝日の野球を見てもらうためだ。

 上西さんは、現在は唯一となった元朝日チームのメンバー。新朝日チームがカムループスの大会に参加するのを毎年楽しみにしている。

 今年8月、家族のいるバンクーバーに滞在していた上西さんは、同月13日に新朝日チームの今シーズン初練習を見学。朝日のユニフォームを着て白球を楽しそうに追いかける子供たちをうれしそうに見つめていた。

 新朝日として子供たちが野球をすることは「うれしいですよ」と上西さん。カムループスの大会では「2年連続優勝をしているでしょ」と満足そう。「もうかわいくて、かわいくて。自分の孫みたい」と、顔をクシャクシャにして喜んでいた。

 

バンクーバー朝日の伝統を受け継いで

 朝日レガシーゲームは、2014年9月にアソシエーション主催で初めて開催された。これをきっかけに誕生したのが新朝日チーム。レガシーゲームは以後、毎年この時期に開催されている。

 創設時15人だった新朝日メンバーは今年120人を超えた。それでも、そのモットーは変わらない。戦前のバンクーバー朝日軍が大切にしていた野球に対する姿勢を受け継いでいく。それは、技とスピードの頭脳プレーと、野球に真摯に取り組むフェアプレーの精神、そして、野球が楽しめる全てに対する感謝の気持ちを持ってプレーすること。

 もちろん「朝日」のことも子供たちに伝えています、と猪亦監督。朝日を知っている親の勧めで入る子供も多いという。

 道具を大事にすること、グラウンドに入る時に一礼すること、試合が終わった後には整列して応援の人々に一礼すること。それは単なる儀式ではなく、平和な時代に野球を楽しめることへの感謝と敬意を忘れないため。そして大切なのは、野球をみんなで楽しむこと。今年も朝日のシーズンが始まった。

 

新朝日チーム

 2014年のレガシーゲームをきっかけに創設された野球チーム。最年少は7歳。性別、国籍を問わず加入できる。2年に一度、日本遠征を実施。13~16歳のメンバーで構成された新朝日チームが日本で親善試合を行い、野球を通じた交流を図っている。次回は2019年。

 

バンクーバー朝日軍

 戦前1914年から1941年までバンクーバーに存在した日系人で構成された野球チーム。技とスピードと頭脳プレーでファンを熱狂させ、フェアプレーの精神は差別時代にあったバンクーバーで日系以外のファンも魅了した。1941年12月、日本軍の真珠湾攻撃を機に、カナダ政府の日系人強制収容政策のためチームは解散。二度と復活することはなかったが、2003年カナダ野球殿堂入りを果たした。2005年BCスポーツ殿堂入り。今では伝説のチームとして語り継がれている。

(取材 三島直美)

 

始球式に臨むGVJCCA及川会長(右)とあいさつした朝日アソシエーション・ウォン会長。2017年9月3日、バンクーバー市ナナイモパーク

 

先発投手はシンクレア選手。この日は投打に活躍。しかし序盤の3失点を悔やんでいた。2017年9月3日、バンクーバー市ナナイモパーク

 

 

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