2017年8月10日 第32号
ドンドン!ドドンドドン! 一打入魂の太鼓の音、激しく勇壮なエイサーの演舞、その舞いと対照的な幽玄の美を表現する琉球舞踊。 バンクーバー・プレイハウスで8月4日、創作芸団レキオスと琉球舞踊団・飛流- HARUの舞台で観客の興奮は最高潮に達した。この強烈な吸引力を持つステージはどうやって生まれるのか。
激しいステージを継続できる驚きの体力。「練習の方がきついので」とメンバーは語る
エイサー、琉舞、三線演奏で沖縄の魂を
「ハイサーイ!」ステージ冒頭、世界エイサー大使の花城正美さんが沖縄の挨拶でスピーチを始め、「今夜は沖縄の鼓魂を持ってエイサーの可能性を追求し、次世代へのエイサー継承に挑んでいるレキオス、そして飛琉-HARUの踊り、三線も披露いたします。存分にお楽しみください」と満面の笑顔で語った。そして岡井朝子在バンクーバー日本国総領事から「一流のパフォーマンスの観られる貴重な機会。沖縄のハートを大いに感じたいと思います」と言葉が述べられた。次に本ステージがカナダ建国150年記念の祝賀行事であることから、NAVコーラスがカナダ国家を歌い上げて舞台が開幕した。
磨き上げられた芸と生命力
「ヒャーサーサー!」と気合いの入った声を上げながら、大太鼓、小太鼓を力強く打ち鳴らし、激しい舞いを披露するレキオス。思い切りの気合いとともにバチを会場に向けた時の迫力といったらない。その強烈なパッションが放たれた後、舞台は一変した。花笠をかぶり、目にも鮮やかな琉球染め・紅型(びんがた)姿の三人の女性が登場。『四つ竹(ゆちだき)』の曲は確かに流れ、手にした竹片「四つ竹」を打ち鳴らす音も響いている。しかし踊り手たちが醸し出す静寂感は何だろう。そこだけ現実離れした異空間のようだ。「鳥肌が立ちました」と舞台後、観客の一人が言った。飛琉-HARUは、最初の一瞬の立ち姿だけでもすでに観客を魅了していた。
古典から創作まで、両グループはバラエティに富んだ演目を披露。三線奏者二人のライブ演奏も沖縄の空気を運んでくれた。活気あふれるチームの動き、威勢のいい掛け声、心底からの喜びの笑顔、後半は再び躍動的な祭りの場となった。そんな演舞中、メンバーたちはどんな気持ちでいるのか。「心の中からうわっと湧いてくる気持ちを伝えたい。とにかく全力を出したいと」 (レキオス・玉里壮平さん)「辛いことがあっても、踊っていれば吹き飛びます」(レキオス・宮城直仁さん)。腰の入った引き締まった踊りからは武道のような印象も強い。「礼に始まり礼に終わるということ、自分たちは小さい時から照屋忠敏代表にそこから教え込まれています」(レキオス・比嘉翔也さん)。いっときも観る者をそらさぬ演舞が終了後、会場は熱気に満ちあふれていた。
叩き込まれた精神
「手拍子をお客さんからやってくださってノリがよく、演者もみんな楽しく踊れました」と語るレキオスの伊波史也さんに、日頃メンバーに叩き込まれていることを尋ねた。レキオス代表の照屋忠敏さんはこう語るという。「一生懸命やる人にはうまい人も勝てない。一生懸命やれる人がお客さんに気持ちを伝えていく。下手でもいいから一生懸命しなさい」と。そこに比嘉翔也さんから聞いた言葉が重なった。「『ぬちかじり(=命がけで)』という、一打を心で打つ、パワー全開で一打を打つことがレキオスのモットーで、エイサーのモットーです」。まさにぬちかじりの演舞にバンクーバーがチムドンドン(=胸の中が熱くなる)した夜だった。
(取材 平野 香利 / 写真提供 斉藤 光一)
多彩な演目を披露した飛流-HARU
艶やかな紅型衣装で『四つ竹』、涙で育つと言われる木・クワディーサーを詠(うた)った『踊りクワディーサー』を静かに舞う
出演者・関係者一同
レキオスに惚れ込みバンクーバー公演に奔走した花城正美さん