2017年5月18日 第20号

ブリティッシュ・コロンビア大学・英語学科在籍中の広瀬歩(あゆみ)さんは、2016年3月から2017年2月まで、東京大学で交換留学を体験。5月13日、BC州バーナビー市日系センター・博物館のかえでルームで、母校グラッドストーン日本語学園の中学科、高等科の生徒および保護者や教師ら約40人を前に、東京での生活、東大の講義、寮生活など、実際の体験に基づいた貴重な話を語ってくれた。

 

「コツコツとがんばる生徒だった」と村上学園長より紹介された広瀬さんの体験談に生徒らが熱心に耳をかたむけていた

 

UBCから東大へ

 広瀬さんは、2012年グラッドストーン日本語学園高等科を卒業、現在はUBCで英語を専門に勉強している。日本語能力検定試験N1、漢字検定試験5級(小学校6年までの漢字)を取得した広瀬さんが交換留学を決心したきっかけは、2歳でカナダに来て、自分自身は日本人だと思っていたが日本に住んだことがなかったので、日本語学校で身に着けた日本語を使って実際に生活してみたいなと思ったからだそうだ。

 UBCは多くの日本の大学と交換留学できる。東大、京都大学、大阪大学など、合わせると17の大学と協定が結ばれている。

 広瀬さんは、東大、東京外語大、上智大が留学先の希望だった。申し込みの際に、書くだけなら東大を第一希望にしてみたらと両親からアドバイスを受け、その通りにしたら、東大への留学が決まった。「90パーセントの確率で第一希望先に行けるということが後で判明しました。必死で勉強して東大に入る人たちには申し訳ないような気がしました」と当時を振り返った。その東大には、昨年9月、世界各国からの留学生が約80人来たという。

 

カナダと日本の大学の違い

 カナダの大学では毎週、講義を受ける前に読んでおかなくてはいけないページが20〜30ページもある。日本の大学では、ほとんどの講義で事前に読んでおくという作業はなく、教授が講義する内容をノートにどんどん書きとっていく。日本語での講義も受けた広瀬さんは、高いリスニング能力が必要だと痛感したという。

 生活の面でも日本語漬けの日々。やはり、聞く力が必要だった。そのためにも「日本語のニュースやバラエティー、アニメなどに親しんだり、聞く力を鍛え、年上の方と話してみるとか、いろんな場面で使える日本語を身に着けることが本当に必要だと思いました」と話した。

 

留学費用

 会に参加していた保護者からは費用について質問も出された。学費は、UBCに年間約5000ドルを納め、東大へ支払う学費はない。寮生活は、朝・夕食付で月約6万円。アルバイトはほんの少しして、友達との付き合いや旅行を楽しみ、群馬県の祖母の家にも遊びに行っていたという。

 

東大での留学を終えて

 交換留学生には東大での在籍学部がなく、国際本部所属となり、留学生が受講可能な講義の中から選択できるシステムになっていて、広瀬さんは、英語の講義のほか、日本語能力検定試験N1を取得しているということで、日本人学生が受ける日本語の講義をいっしょに受講したり、通訳・翻訳の講義を受けることもできた。

 「日本に行く前は、日本は怖いところだという印象でした。学校ではイジメ問題があり、社会人になれば過労死の問題が起こる」と留学前は不安もあったそう。「しかし実際行ってみると、そうではなかった。そして、日本語学校で学んだ日々は決して無駄ではなかったと実感しました。日本語学校を続けて良かったです。卒業後は、日本で生活してみようかなと思うようにもなりました。将来の可能性が広がったような気がします」と、留学後の心境の変化についても語ってくれた。

 30分のお話を聞く会のあと、質疑応答の時間が設けられ、様々な質問が生徒や保護者らから出されたが、そのひとつひとつに広瀬さんが、美しい日本語で的確に答えていたのが印象的であった。

(取材 小寺真喜恵)

 

 

パワーポイントを用いて東京での生活をいきいきと語る広瀬さん

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。