2017年5月18日 第20号
5月11日、ブリティッシュ・コロンビア州・ポートムーディ市のポートムーディ・アーツセンターで、展覧会「From Japan to Canada」のオープニング・レセプションが行われた。同展覧会は、多様な日系アーティストたちの作品を展示し、日本文化のイベントも行う大規模なもの。5月いっぱい行われる「explorASIAN 2017」 フェスティバルの一環で、6月8日まで開催される。
会場には大きなこいのぼりも
会場を彩る、艶やかな着物の女性たちを描いた絵は、亀井吉次さんの作品。伝統的な美人画の影響を受けつつ、「いろいろなアングルから女性のプロファイルを捉えて描いています。何気ない動きから、日本女性の魅力を表現したい」。杯を持つしなやかな手、下駄を揃える姿…。生き生きとした現代の美人画は、多くの人を惹きつけていた。
カナダの雄大な自然を、ソフトパステルでやわらかく、どこか幻想的に描いた作品は、鈴木勘之さんのもの。アルバータに住んでいた鈴木さんは「バンフ、ジャスパーなどの、カナダの山と湖にひかれます。スケールが日本とは違う」と語る。
若い頃から関心があった絵を始めたのは、リタイアしてから。動物の絵も好きで、最近はアクリル画も始めた。「絵を描くのは自分が生きている証ですね」。
藤野美津子さんは、バンクーバーの街並みや日本の風景を、温かく描き出す。なかでも気に入っているのは、夏、冬の両バージョンがある、ダウンタウンのシルビアホテルの絵。「人のいる景色が好きなんです。人そのものだけでなく、レストランや自動車、椅子など人の気配がある風景ですね」。
ギャラリー中央には、華道すみの家元、角澪潮さんによる生け花が並ぶ。それぞれに個性豊かな花器は、今回の展覧会で唯一、日本人、日系人以外のアーティストが制作したものであり、カナダにおける日本文化の影響が伝わってくる。
たくさんの女性たちで賑わっていたのが、テリー佐々木さんの、着物をベースにした洋服の展示。「基本的には絵を描いています」という佐々木さんの、和紙に描かれた絵画は、静と動のバランスを表現している。東洋と西洋の美が融合した作品群は、今回の展覧会のテーマに通じている。
陶芸家ロバート・シオザキさんの作品は、日系人の歴史を物語るインスタレーション。これは数年前に日系センターでも展示されたもの。異なる視点から日本とカナダを表したアートとして、大勢の人たちの注目を集めた。
同センターでは「ひとつのタイトルのもとに、さまざまな展示を行うのは異例なこと」と、ギャラリーマネージャーのJanice Cotterさん。もともとは亀井さんが、鈴木さん、藤野さんとの三人の展覧会として提案したが、「もっと大きなものにできる」と感じ、多くの人々の協力のもと、「日本とカナダ」をテーマにした大掛かりなイベントとなった。
5月27日には、日本の音楽やアクティビティも楽しめるスプリング・フェスティバルも開催。日本文化の美しさを感じられる、家族向けのファミリーイベントということで、気軽に参加できそうだ。
(取材 宗圓 由佳)
Sylvia Hotel Summer by Mitsuko Fujino
Sakazuki by Yoshi Kamei
Mountains and Lake by Ken Suzuki