2017年5月11日 第19号
バンクーバー在住の女優、吉田真由美さんが脚本を手がけ出演する舞台「NeON-ね音-」が、The Cultchで開かれるrEvolver Festivalで上演される。この作品は昨年Vancouver Fringe Festivalで、吉田さんが脚本、出演、演出を手がけたものを大幅に手直ししたものだ。英語と日本語をとりまぜた舞台をぜひ日本の人にも見てもらいたいと意気込みを語った。
吉田真由美さん
グローバルなバックグラウンド
父親の仕事の関係で幼少時は東京、ワシントンDC、ベルギーで過ごした吉田さん。12歳のとき日本に戻ってきた。舞台や映像の仕事に携わりたいと思っていたものの、日本の業界のシステムが自分にはあまり合っていないと感じていた。悩んでいた頃、父がバンクーバーに出張に行き、バンクーバー・フィルム・スクール(VFS)のパンフレットを持ち帰ってきた。とりあえず1週間のサマーコースを受けてみようとバンクーバーにやってきた。そこで、「役者もアーティストなんだという視点に気づかされました。また、人間の本質を芝居を通して見つめていくということを教わり、これが私のしたかったことなんだと思いました」。そして、「役者として続けていくにはもっと勉強が必要だ」と思い、VFSに1年間通った。卒業後すぐにエージェントが見つかったのだが、それは英語と日本語両方を流暢に話すことができたのが大きかったという。オーディションを受け仕事を得るようになり、私生活でもパートナーに出会って永住権も取得。順調にキャリアを積んでいる。
それぞれの愛の定義
「NeON-ね音-」は吉田さんが祖母の経験を元に膨らませていった作品。軸となるのは祖母と孫娘(吉田さんが1人2役を演じる)の会話だ。「監督、演出、出演、プロデュースをした短編映画『あかし』が、今年Telus StoryhyveのShort Story部門で最優秀賞を受賞しました。その映画の長編のようなものが、この舞台です」。祖父には不倫関係を続ける女性がいた。それを黙って受け入れ婚姻を継続するしかなかった祖母の話が、孫娘の人生にどういう影響を与えるかを描く。人生における選択肢が多い現代を生きる孫娘と、選択肢が限られていた祖母。選択肢が多いことが幸せにつながるのかどうか。見合い結婚や現代の恋愛など、さまざまな愛の形も描かれる。
この作品では日本語のセリフが大切な部分を担っているという。「日本の方がたくさん見に来てくれるとうれしいですね。舞台の素晴らしいところは、同じ空間で演じるほうも見るほうも同じ感情を共有できる一体感だと思います。バンクーバーで日本語の舞台というものがないせいもあり、舞台を見に来る日本人が少ない現状ですが、この機会に、こうした芸術のコミュニティにも目を向けてもらえたらいいなと思います」。
バンクーバーで仕事を続けているうちに、演劇や映像のコミュニティに深く関わるようになった。今後は日本とカナダ共同でのドラマ制作などに関わってみたいという。「こうしたことを通じて日本とカナダの架け橋となるようなことができたらいいですね」と語った。
(取材 大島多紀子 / 写真提供 吉田真由美さん)
吉田真由美さんプロフィール
東京都出身。父の仕事の関係で幼少時に東京、アメリカ、ベルギーで暮らした。2010年にバンクーバーへ。数々の舞台、TV、映画に出演。ドラマシリーズ「Man in the High Castle(高い城の男)」に出演するほか、同作品の日本語監修も担当。2015年「This is A Play」で舞台監督としてデビュー。
NeON-ね音- 公演情報
5月24日 午後7時開演
5月26日 午後9時半開演
5月27日 午後3時半開演
5月28日 午後6時開演
The Cultch Historic Theatre
1895 Venables St., Vancouver
チケット購入:www.tickets.thecultch.com
または、電話604-251-1363
チケット 20ドル
「NeON-ね音-」ポスター