2017年3月23日 第12号
ロータリークラブ・バンクーバー定例昼食会が3月14 日、バンクーバー市ターミナルシティクラブで開催され、岡井朝子在バンクーバー日本国総領事がゲストスピーカーとして講演した。テーマは「未来へ向けた日加関係、150 年のその先へ」。
今年建国150 周年を迎えるカナダ。時をほぼ同じくして、日本からブリティッシュ・コロンビア州への移民が始まり築かれてきた日系社会。今年は、日本人が初めてバンクーバーに上陸してから140 年、日系人強制収容開始から75 年、そして来年は日加修好90 年と、日加関係で節目の時期を迎える。 この2国間の共に歩んできた関係を、経済的、文化的交流を通して振り返り、未来へ向けた、さらなる関係構築の重要性を語った。
講演する岡井総領事。日加関係が節目を迎える今年と来年は、イベントを計画しているので、ぜひ参加してほしいと語った
日本・BC州の経済的つながり
二国間の貿易関係は、カナダ統計局報告によると、2015年のカナダへの日本からの輸入は5位、カナダから日本への輸出は4位と、どちらもトップ5に入るという。その中で、カナダから日本への輸出のうち、BC州が占める割合は35パーセント。これは全13州・準州の中でも多く、BC州が日本にとって経済的に重要な位置を占めていることが分かる。
さらに、カナダから日本への輸出品目で多いのは、農産物では、キャノーラ種・油、小麦、大豆、豚肉、鉱山物では、ウラン、銅、石炭で、これらのほとんどはBC州を通って日本へ輸出されると、紹介した。
そして「ここに近い将来、液化天然ガス(LNG)が加われば」と述べ、会場からは拍手が起こった。
日本は、1945年の終戦から、51年のサンフランシスコ講和条約署名(52年発効)、56年国際連合加盟と10年をかけて国際舞台へと復帰した。1964年にはアジアで初、東京五輪が開催された。そして日本経済は急成長を遂げ、1965年から1973年の経済成長は「日本の奇跡」と呼ばれたと紹介した。
総領事の「日本が世界経済2位に躍り出たのは何年か?」というクイズに、1968年、1991年、2009年の三者択一で、会場では1991年が最も多かったが、実際は「1968年」という回答に、驚きの声が挙がった。
しかし、日本は1991年から「失われた20年」という経済停滞期に入る。2009年には世界2位の座を中国に明け渡した。
それでも2012年、安倍政権誕生とアベノミクスで経済に明るい兆しが見えているという。特に、テクノロジー、エネルギー、ヘルスケア、ツーリズム、農業、教育といった産業に力を入れ、これらはBC州のビジネスにも大きなチャンスとなると紹介した。
良好な交流が産業振興にも寄与
BC州政府も、テクノロジー、グリーンエコノミー、デジタルエンターテイメントが、州にとってカギとなる産業と位置付けている。IT企業やゲーム会社がBC州に進出、日本のゲームメーカー大手バンダイ・ナムコも、バンクーバーでの事業拡大を図っていることを紹介した。
さらに、日本や日本文化が好意的に受け入れられているBC州では、友好関係がビジネスに好影響を与える観光や教育産業で、大きなビジネスチャンスがあると考えていると語った。
2016年のカナダへの日本人観光客は前年比10パーセント増、BC州へは8パーセント増となった。またカナダから日本への観光客も過去最高を記録。今後も成長が期待できる産業と位置付けた。
教育分野のBC州と日本の関係は非常に重要とみている。アベノミクスでは、日本人学生の海外留学を推進していて、BC州の確立された教育分野の環境・体制は、日本人の英語学習と能力向上に重要と語った。
良好な文化交流は草の根活動にも大きな役割を果たしている。バンクーバー支部も含めロータリークラブ活動は教育・若者支援に力を入れ、その貢献は世界に広がっていると称賛した。
また、草の根活動では姉妹都市関係も重要で、日本とBC州・ユーコン準州には34の姉妹都市関係があるとその広がりを紹介した。ロータリークラブ・バンクーバーは、東京の世田谷南ロータリークラブと姉妹関係を結んでいることも紹介。2011年3月11日東北を襲った東日本大震災から6年目を迎えたが、その際、同クラブからの寄付に感謝の意を表した。
日本・BC州の未来に向かって
BC州と日本の現在の良好な関係において、日系人の貢献は欠かせないと岡井総領事。1877年に初めて日本人がBC州に到着してから、今年で140年を迎えるが、その間、この地で日系人が果たしてきた役割は計り知れない。1941年日本のパールハーバー襲撃に端を発する、カナダ政府の日系人強制収容が始まったのは1942年。それは1949年まで続いた。日系人によるリドレス運動を経て、1988年にはカナダ政府が公式に謝罪。BC州政 府は2012年に公式謝罪した。
バンクーバー総領事館は1889年に設置され、こうした日本人・日系人の歴史に寄り添ってきた。現在、BC州・ユーコン準州には4万5千人の日系カナダ人と、3万5千人の日本国籍を有する邦人が在留している。在留邦人数では世界9番目と大きなコミュニティとなっている。
現在、こうして日本とBC州・カナダが友好な関係を築いているのは、先人の苦労と努力によるところが大きく、我々は過去の出来事を教訓に、未来の世代につないでいくために、共通の価値観で結ばれた友好関係を、さらに深めていきたいと語った。
(取材 三島 直美)
岡井総領事とロータリークラブ・バンクーバーのジョン・バサースト会長。最後に、総領事の「過去を教訓に未来を築くという言葉に共感する」と語り、「そういう意味では広島の平和記念館を訪問することをお勧めする」と声を詰まらせ語った