太陽エネルギーで、アメリカ大陸横断
番場氏がエネルギー技術に興味を持ち始めたのは、20年以上前のことだという。学生時代にはハングライダーに没頭していた番場氏は、1988年から1990年にかけて、太陽光を動力源とした一人乗りの飛行機を製作。イメージとしてあったのは、映画「風の谷のナウシカ」に登場する「メーヴェ」という飛行装置だそうだ。太陽エネルギーでアメリカ大陸を横断することに成功した番場氏は、その後、環境調査やエネルギー技術の普及活動に本格的に取り組むようになった。
次世代エネルギーについて子供たちに伝える
普及活動の中でも特に力を入れているのは、これからの時代を生きていく子供たちを対象としたワークショップだ。言葉で技術を説明しているだけでは子供たちに伝わらないため、燃料電池のミニチュアカーを使ってカーレースをしてもらうなど、工夫を凝らしている。番場氏は今回のセミナーにも実験器具を持参し、聴衆の前で実験をすることで、水素エネルギーを使った燃料電池の技術をわかりやすく説明した。
深刻化するエネルギー問題
今地球では、どのようなエネルギーが使用されているのだろうか。番場氏は講演の中で、世界、日本、カナダ、BC州のそれぞれにおけるエネルギー資源の割合を紹介し、石油や石炭などの化石エネルギーに大きく依存している世界の現状を解説した。カナダでは他の地域よりも水力が大きな割合を占めているとはいえ、再生可能エネルギーの占める割合は、世界で1・3%、日本とカナダでそれぞれ1%と、依然として非常に低い。
世界の埋蔵エネルギー資源が尽きるのは時間の問題であり、可採年数は、石油が42年、石炭が122年とされる。このような統計を見ると、改めて、次世代エネルギーを推進することの重要性がわかる。
大きな可能性を持つ水素エネルギー
次世代エネルギーの中でも、番場氏が特に注目しているのが、水素エネルギーだ。まず、水素エネルギーは有限な資源ではない。また、生成する方法は幅広く、貯蔵することも可能だ。番場氏は2005年に、水素を燃料とする自作の燃料電池ビークル(三輪車)でアイスランドの周回走行約1600キロに成功しているが、この国は、水素エネルギー先進国として知られる。番場氏の冒険の様子を記録したDVDは、 水素エネルギーのインフラ整備が進むアイスランドの様子も伝えていた。
また、アイスランドでは、氷河や地熱など、大自然の恵みを利用したエネルギー技術も発達しており、エネルギー資源の割合を見てみると、地熱発電がなんと全体の66・4%を占めている。アイスランドの例は、世界における今後のエネルギー政策のあり方を示しているようで、参加者はそれぞれに大きな刺激を受けたようだった。
講演後には、質疑応答が行われ、水素の安全性や、将来の日本の電力供給システムについての話し合いの場となった。このセミナーを通して、地球が今、エネルギー資源の面でどのような状態にあるのかを考え、次世代エネルギーが秘める大きな可能性に気付くことができた。
(取材 船山祐衣)