2017年3月9日 第10号
世界的ピアニスト、ジョン・キムラ・パーカーが再びバンクーバーにやってくる。今回はバンクーバー交響楽団(VSO)との共演で、ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)チャンセンターとノースバンクーバーのセンテニアル・シアターでベートーベンの『ピアノ協奏曲第1番』を演奏する。公演に先がけ、話を聞いた。
ピアニストのジョン・キムラ・パーカー(写真提供 VSO)
ー教えることと演奏家としての両立をどのようにこなしていますか?
子どものころから人前で演奏することが好きでした。演奏ツアーを短くすることでレッスンとの調整をしています。生徒の成長を見るのはうれしく、誇りです。素晴らしい師(母)を見ながら育ったので、教えることは自然の流れだったと思います。
ー母、パーカー敬子さんについて
母は家で音楽理論、和声、音楽史、対位法などを教えていました。うちの地下の教室で音楽を習ったという人が各地にいて、みな口を揃えていい先生だったと言います。母は教えることへの献身的な姿勢を貫きましたので、ロイヤル・コンサーバトリー・オブ・ミュージック(RCM、王立音楽院)から第1回めの「Teacher of Distinction賞」を受賞したことは素晴らしいと思います。
ーデビューして30年以上になりますが、音楽に対する姿勢は変わりましたか? どのように感性を磨き続けていますか?
若いころは年上の演奏家のように弾こうとしていましたが、年を重ねた今は若い人のように弾こうとしています!
私は音楽というものは輝きがあり、人の関心を惹き、加えて人間の感情を反映させるものだと考えます。大作に取り組むと、いつも感化されます。
イギリスで活躍したロックバンド『ポリス』のドラマー、スチュアート・コープランドとグループを組んで演奏をしたり、この夏はオタワでオスカー・ピーターソン作曲のジャズを演奏します。こういった音楽的な冒険はとても刺激になります。
ー今回はベートーベンを弾きますね
私は初期のベートーベンの作品が好きです。エネルギッシュでユーモアがあり、音色が豊かでリズム感があふれているからです。
今回弾く第1番では第1楽章で3つ違ったカデンツァがありどれかひとつを選ぶのはむずかしいのですが、後年に書かれた一番長いカデンツァを弾くことにしました。大規模なもので、ピアノ協奏曲のレパートリーの中では一番長いカデンツァです。
指揮者のジョシュア・ワイラースタインとは、昨年ニューヨーク・フィルハーモニックと共演したヴェイル(Vail)音楽祭で会いました。注目の若手指揮者との共演を楽しみにしています。
(取材 ルイーズ 阿久沢)
VSO バンクーバー・シンフォニー・オーケストラ
3月24日(金)、25日(土)UBCチャンセンター
3月27日(月)センテニアル・シアター(ノース・バンクーバー)
8:00PM 開演
指揮:ジョシュア・ワイラースタイン
ピアノ:ジョン・キムラ・パーカー
ベートーベン/ピアノ協奏曲第1番、シューマン/交響曲第3番「ライン」ほか。
UBCチャンセンター:$37〜$65、センテニアル・シアター:$42(シニア/学生割引きあり)
オンライン購入:www.vancouversymphony.ca
電話(604) 876-3434
ジョン・キムラ・パーカー:
バンクーバー生まれ。4歳より母パーカー敬子、叔父エドワード・パーカーに師事。UBC、ジュリアード音楽院卒。ライス大学シェパード音楽学校(ヒューストン)ピアノ科教授。1996年カナダ総督賞(舞台芸部門)、1999年カナダ政府から「オーダー・オブ・カナダ」勲章(「オフィサー」の称号)を授与。 妻のアロイジア・フリードマンさんはヴァイオリン・ヴィオラ奏者でアメリカ・ワシントン州の『オーカス島室内楽音楽祭』の創始者・音楽監督(www.oicmf.org)。
2016年にロイヤル・コンサーバトリー・オブ・ミュージック(RCM、王立音楽院)より名誉会員(Honourary Fellowship)として表彰された。受賞式で母のパーカー敬子さんと (写真提供 ジョン・キムラ・パーカーさん)
指揮者ジョシュア・ワイラースタイン(写真提供 VSO)