2017年2月23日 第8号
戦前のバンクーバーに実在した伝説の日系人野球チーム「朝日ベースボールチーム」。そのレガシーを受け継ぐ野球チーム「新朝日ベースボールチーム」が、3月の日本遠征を前にした2月20日、バンクーバー市にある在バンクーバー日本国総領事館の岡井朝子総領事を表敬訪問した。
選抜メンバーの日本遠征は今回が2回目。チームを代表して猪亦功憲(いのまたあつのり)監督、福村十三郎(とみお)コーチ、猪亦慶希(よしき)主将、山本陽郎(ひろ)副主将が訪問。野球を通した日加の国際交流と初勝利を約束した。岡井総領事は「(朝日の)伝統が引き継がれるのは誇りでもありますし、日本でもその歴史を広めることができることは、すごく良い試みだと思います」と語り、「(日本遠征の)成功を祈っています」と激励した。
Asahiグッズを贈られた岡井総領事と新朝日チーム4人。(左から)猪亦監督、岡井総領事、猪亦主将、山本副主将、福村コーチ
「朝日の野球を…」
猪亦主将は遠征2回目。前回は最年少での参加だったが今回はチームを率いる。遠征を前に「チームのみんなに日本の野球を見せたい」と交流戦を楽しみにしていた。日本では「朝日の野球を…」と語り、バントや盗塁など、頭脳とスピードとフェアプレーでバンクーバーを沸かせた往年の「朝日ベースボールチーム」野球を見せたいと意気込みを語った。
チームは3月8日にバンクーバーを出発。27日に帰国するまでの間、天理(奈良県)、京都、大府市(愛知県)、横浜、東京で14試合をこなす。対戦相手は、高校野球の常連校やクラブチームなどで、なかなか手ごわい。前回2015年遠征では1勝もできなかっただけに、今回は気合が入る。
遠征チームは新朝日チームからトライアウトで選抜された12から16歳までの精鋭15選手。日系人以外にもカナダ人、フィリピン系カナダ人選手も選ばれている。9月に選抜され、天気に恵まれない秋からこれまでの合同練習は、リッチモンド市のオリンピックオーバルで行ってきた。
山本副主将は「チーム一丸となって勝利できるように頑張ります」と語り「半分は勝ちたい」とはにかんだ。猪亦主将は、監督に多少言わされた感はあるが、「全勝を目指します」と笑った。2人とも遠征を楽しみにしているようだ。
岡井総領事との面会では、前回大会で子供たちが初めて入る野球専門店で写真を撮ったりと興奮していたことや、言葉の壁を越えて日加の選手が楽しそうに話していたエピソードを披露した。
猪亦監督は、野球を通してさまざまな人と出会い、いろいろな経験をしてもらいたい、たくさん友達を作ってもらいたい、と野球を通した国際交流という経験を積んで次につなげてほしいと願った。ただし試合は「もちろん勝ちにいきます」と全勝目標。前回はコーチで参加し勝利できなかっただけに、まずはチーム初勝利、そして監督初勝利を狙う。
今回は2回目ということで「前回よりも朝日を知ってもらっていると思うので、日本での交流は楽しみです」と語った。
遠征団は選手、監督・コーチ、家族を含め約40人。日本で待つ関係者も含め、日加交流に貢献する一大イベントとなりそうだ。
新朝日ベースボールチーム
戦前バンクーバーで活躍した「朝日ベースボールチーム」の意志を受け継いで2014年に結成された野球チーム。朝日ベースボール・アソシエーション(前身:カナディアン・ニッケイ・ユース・ベースボールクラブ)がサポートしている。2014年9月にバンクーバー国際映画祭で公開された映画「バンクーバーの朝日」(監督:石井裕也、主演:妻夫木聡)もきっかけとなった。
現在メンバーは7〜18歳までの125人。2015年に日本初遠征。2年に1度の日本遠征を企画している。朝日レガシー試合やカムループスの大会にも参加している。
http://asahibaseball.com/
朝日ベースボールチーム
1914年にバンクーバーで創設された日系人による野球チーム。日系人差別や排斥運動の中でも、フェア精神と頭脳プレーで活躍し、民族を越え野球ファンから愛されたチーム。1941年12月太平洋戦争勃発と同時に解散に。2003年にカナダ野球殿堂入りを果たした。2005年BCスポーツ殿堂入り。現在ブリティッシュ・コロンビア州カムループスに当時選手だった上西ケイさんが在住している。
(取材 三島 直美)
新朝日チームを激励する岡井総領事。「帰国後にはぜひ報告会を」と約束した