2016年12月1日 第49号
ブリティッシュ・コロビア州ウィスラーの秋の恒例行事として定着した「牡蠣の早あけ世界大会」。ことしは世界5カ国より選ばれた20人の招待選手により、「食とワインと人生のセレブレーション」をモットーとするベアフットビストロ・レストラン(リステルホテルウィスラー)主催で、11月20日ウィスラーカンファレンスセンターにて開催された。
参戦中の岩井利之選手
11月のウィスラーは「食とドリンクのセレブレーション」、コーノコピアと呼ばれるイベントの最中だが、「牡蠣の早あけ世界大会」は、最終日を飾るメインイベントとなっている。
ことし20周年を迎えるベアフットビストロ・レストラン・マネージャーのアンドレ・サンジャックさんは、今までピーク2ピークゴンドラを使った空中レストランやマスクレーブ(仮面舞踏会)など独創的なイベントを企画し、北米のみならず世界的に注目を浴びている。世界中で食される食材を使った「牡蠣の早あけ世界大会」優勝はオイスターシャッカー(牡蠣あけ師)の目標の一つにもなっているそうだ。
「牡蠣の早あけ世界大会」には、アメリカをはじめエストニア、アイルランド、デンマーク、カナダ国内はニューブランズウィックやモントリオール、トロント、バンクーバーからの参加者がある。ヨーロッパ大会の勝者や、アイルランドのゴールウェイの大会で何回も優勝経験のあるスティーブン・ノーラン選手などの強者揃い。そして現在カルガリーでレストランを経営しながらプロシャッカーとして活躍している、日本人オイスターマイスターの岩井利之選手が参戦。
牡蠣の早あけ大会としては異例の高額賞金、1位の5000ドルをめぐり、熱いバトルが繰り広げられた。
2年連続参戦の岩井利之選手は「昨年は平常心を保てなかったので今回は集中して頑張ります。ことしは1位狙っていきますが、とりあえずファイナルにいけるように。今までは、牡蠣をテーブルの上において開けていましたが、昨年度の優勝者と話して、手で持ちながらあけたほうが早いのではないかと…ことしはそれでいきます」。「目標タイムは3分」との抱負を語った。
さて、3時にオープンした会場には、BC州ソーミル・ベイ・シェルフィッシュ・カンパニーにより提供される新鮮な生牡蠣を目当てに、この豪華な「セレブレーション」を楽しもうと、ドレスアップした観客が続々と入場。
会場ではDJによる音楽が流され、同時に開催されていたブラッディーシーザー・バトルのカクテルやワインを飲みつつ、次々にあけられる生牡蠣を食しながら、カナダトップシェフのひとり、アワードシェフで総料理長のメリッサ・クレイグさんによる創作料理や、ナイトロアイス(目の前で液体窒素を使って作られるアイスクリーム)などのデザートを約700人の観客が楽しんだ。
日本人では、岩井利之選手の応援に、シーズンを終えたばかりのバンクーバーホワイトキャップスFCの工藤壮人サッカー選手、元宝塚歌劇団の十輝いりすさん、スカイランドトラベル会長の島田友子さんらがかけつけた。
競技は4人ずつ行われ、その中の上位4名がファイナルに進出する。
3種類の計30個の牡蠣をできるだけ早くあける。牡蠣の外観、身のカット状態、身の入っている殻が壊れていないかなども審査されペナルティーとしてタイムに加算されるので、彩速(あでやかさ、速さ)の技術が求められる。「それはショーであり、マジックであり、最高のエンターテイメントである」と言われる所以だ。
どうやらことしのシャッカー泣かせの曲者は、丸くて大きい緑色の牡蠣(ヨーロッパ産)、力ずくでもあけられない。知恵と技術と体力と精神力が本当に試されているのが伝わってくる。
工藤壮人さんは「地元の牡蠣をテーマにこれだけの人が集まって盛り上がっている。真剣勝負は、見ていて飽きないです。とても楽しいイベント」と語っていた。
第6回牡蠣の早あけ世界大会でみごと優勝したのは、第1回、第3回の大会で優勝したトロントのイーモン・クラーク選手。2位はモントリオールのジェイソン・ナギー選手、3位はバンクーバーのイボン・ジーン・ニコッド選手となった。
また、ブラッディーシーザー・バトル優勝はケテルワン・ウオッカを使ったバンクーバーのヨエル・ビジニロさんに贈られた。
この大会の収益金は、子供たちや障害者スポーツ、アート、文化、環境に寄与するウィスラーブラッコム・ファウンデーションへ寄付された。
リステルカナダ社副社長の上遠野和彦さんは「ことし6年目となるこの大会、スキーシーズン前に、これだけ多くの方がウィスラーを訪れて下さり、うれしく思います。世界的人気のウィスラーで、世界に誇るBC州産牡蠣のおいしさを知っていただき、今後も地元に貢献できたら幸いです」と抱負を語った。
氷河のそそぐ美しい海でミネラルたっぷりに育ったBC州産の牡蠣。おいしいばかりか、美肌と疲労回復に効果抜群で、一口サイズの牡蠣6個が栄養ドリンク1本分に相当するそうだ。肝機能の低下するこれからの季節にうれしい食材だ。
審査員のクリス・フィールドさん(トロントのシーフードレストラン「オイスターボーイ」)は「昨年のこの時期は日本にいて参加できなかった。日本代表の典子(第2回、第3回大会日本代表の鎌島典子さん)と一緒に、広島の牡蠣をむいてきたよ」と語っていたが、まさに牡蠣は世界をつなぐ。
(取材 野口 英雄)
会場では生牡蠣を思い切り楽しめる
(左から)優勝したイーモン・クラーク選手、3位のイボン・ジーン・ニコッド選手、2位のジェイソン・ナギー選手
熱き戦いを大勢の観客が見守った
仕上がりをチェックする審査員