2016年11月24日 第48号
ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)で11月22日、サンタ・オノ教授の第15代学長就任式が行われた。
会場となったチャン・センターには大学関係者ら多くが参加し、オノ学長就任を祝った。同大学リンゼイ・ゴードン総長、ブリティッシュ・コロンビア州ジュディス・グーチョン副総督をはじめ、多くの関係者が祝辞を述べる中、日系カナダ人作家として知られる同大学名誉博士ジョイ・コガワ氏も祝辞を贈った。
「このような歴史的瞬間に立ち会うことができて非常に光栄です。今のこの場所には(日系)一世と二世の魂が満ち、我々と共に喜んでいることと思います」と述べた。最後にはオペラ化された自身の作品『ナオミの道』の一説を紹介。日系人が内陸へと何も持たずに強制移動させられる中、それでも常に持っていたものが3つある。それは「音楽、言葉、そして愛情という贈りもの」と語った。
式典ではその音楽が幕間的な役割を果たし、参加者を和ませた。カナダ国歌『オー・カナダ』では、チェロ演奏者でもあるオノ学長にちなみ14人のチェリストが演奏。14人の演奏者は、13州・準州と先住民族を表していると説明された。また途中では童謡『故郷』の合唱があり、コガワ氏の祝辞のあとには『ナオミの道』の一幕も舞台で再現され、式典に華を添えた。
開会のあいさつをするUBCゴードン総長。中央にオノ学長。壇上には関係者がずらりと並ぶ
未来へとつなげる 大学を目指して
参加者に見守られながら学長就任の宣誓式を終え、就任あいさつを述べたオノ学長。「第15代学長としてこの素晴らしい大学に貢献できる機会が与えられたことを大変光栄に思います」と語った。そして式典に出席していた家族と両親に感謝の言葉を述べた。
30分間に及んだ就任あいさつでは、UBCの歴史に触れ、これからの大学の在り方について語った。
これまでの百年に先人によって築き上げられた素晴らしいこの大学を、より素晴らしくして次の百年につなげていくために、教育、研究、革新、そしてコミュニティとのつながりという4つのキーポイントをあげた。教育、研究という大学としてのコアな部分をおろそかにすることなく、さらに発展させながら、教育機関としてだけでなく、この地に根付くコミュニティの一因としてその責任を果たしていかなければならない「現代の大学は象牙の塔ではあってはならない」と語った。
さらに、インターナショナルプログラムの再建を掲げ、国際学術機関の中のUBCを再認識し、特にアジア研究で知られる大学の特長を生かしていくとした。
「大学とは特定の誰か1人がカギとなるところではない」と述べ、あらゆる人の力が結集し、優れた大学へと導いていくと語った。
力を合わせるということは、多様性を称え受け入れることであり、広く意見を聞くことであり、UBCはそれができる大学であり、そうして「ブリティッシュ・コロンビア大学がさらに素晴らしい大学となると信じている」と語った。
サンタ・J・オノ学長の略歴
医学、生物学教授。1991年マギル大学で実験医学の博士号を取得。その後、教授としてハーバード大学、ジョンズ・ホプキンズ大学などに勤務。免疫システムなど数々の研究を手掛けている。2012年から16年までシンシナティ大学学長を務めた。2016年8月15日ブリティッシュ・コロンビア大学学長に就任。バンクーバー生まれの日系二世。
(取材 三島直美)
学長就任宣誓式。左はブリティッシュ・コロンビア州ジュディス・グーチョン副総督
学長ローブに着替え、就任のあいさつをするオノ学長
祝辞を贈るコガワ氏