2016年11月17日 第47号
11月12日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市のBCIT Sportsplexで第17回大会が、開催された。2020年の東京オリンピックの正式種目に空手が決定したこともあって、参加選手数は例年より大幅に増加した。選手400人、ボランティア100人、審判50人、観客500人にのぼった。今年は、とくに子どもや若い人たちの参加が多く、同時に保護者の観覧も増加した。
凛々しい姿の空手キッズの少女たち
『国境の壁』を打ち砕く?日本空手の力
選手は、カナダ各地からはもちろん、アメリカ、中近東、ヨーロッパ、アジア各地の国や地域から集まっていて、まさに国際大会の様子だ。こんな環境に幼いころから慣れ親しんでいくことのメリットは技を磨くこと以上に大きいに違いない。
空手が、オリンピックの正式種目に選ばれたのは、「国境の壁」を日本の空手が突き破り、世界各地に広まったからにほかならない。糸東流空手道正晃会・佐藤義晃師範は、古くから世界各地をめぐり空手道を普及して回った。空手の「強さ」への憧れが、もちろん入門の動機の第一歩だが、同時に身についていく礼儀や人を尊ぶ心、忍耐力などの精神性が理解され、日頃の稽古や試合のときにも現れている。
会場の整理や食事の世話などでボランティアで参加していた日本人女性は、「私は、ワーキングホリデーでバンクーバーに来ていて、実は、空手などの武道については、まったく知らず、ボランティア参加しました。まず、びっくりしたのが、国際色豊かなこと、そして、子どもたちでも日本人の私たちが恥ずかしいぐらい行儀よく、『オスッ』とか『礼』、『始め』などの日本語がそのまま使われていて、なにか、とても誇りに思いました」と語っていた。
この機会を友だちの輪が広がるきっかけに
今回の大会に参加したボランティアは100人を超え、揃いのピンクTシャツを着て実にかいがいしく働き、大会をスムースに運ぶ原動力となっていた。そのことへの感謝の意を佐藤師範は「たとえば、ボランティアで参加してくれたワーキングホリデーの日本の人と糸東流空手道正晃会のUBCの学生との友情が深まるような、継続的な機会づくりを考えていきたい」と述べ、次なるプランを考えていた。さっそく、来年1月21日に予定されているイングリッシュ・ベイでの寒中稽古への参加を呼びかけていた。UBCの学生たちとのつながりは、英語上達への近道にもなるに違いない。
佐藤師範がバンクーバーへ来て以後、培ってきた友情が、『BC州日本武道振興会』設立へとつながった。さらに…
通常、日本では、異なる武道との交流はまれだが、ここバンクーバーで少林寺拳法、合気道(バンクーバー祥門会)、剣道(練武道場)、柔道(石川ファミリー柔道クラブ)、空手(糸東流正晃会)の5団体のそれぞれの代表者が、友情を深めてきた結果、「日本の武道精神を根底にして、社会のために役立てようではないか」という意図で『BC州日本武道振興会』が、3年前に発足した。毎年2月に行われるイジメ撲滅の「ピンクシャツデー」には、各道場をあげてドネーション活動に参加したり、研修会を実施するなどの行動をしてきた。
日本の伝統には、「武道」以外にも「華道」、「茶道」、「香道」、「書道」など、道の付く文化がある。これには、技術以上に精神をも極めようという共通した意図がある。日本文化の普及や多くの人に役立つ存在であるために、『日本武道振興会』は、この『道』の繋がりをさらにつなげていきたいと望んでいる。
(取材 笹川 守)
熱気あふれる試合会場
団体戦で優勝のカナダBC州チーム
みごとな「形」の演技をするアメリ・デル・ロザリオさん(13歳)
ボランティア参加の(左から)藤井恵さん、諸井司さん、井上真理子さん、松家麻紀子さん、黒谷美由さん
友情のスピーチをする少林寺拳法代表の橋本政明さん(左)と佐藤義晃糸東流空手道正晃会師範