2016年9月22日 第39号
ことし春の外国人叙勲で旭日双光章を受章した、ロバート・タダシ・バンノ氏(73歳)への叙勲伝達式が、バンクーバー市の在バンクーバー日本国総領事公邸で9月13日に行われた。
バンノ氏は、日系プレース基金理事長であり、ブリティッシュ・コロンビア州日加協会理事も務める。また過去にはBC州バーナビー市の日系文化センター・博物館理事長を務めるなど、カナダの日系団体の活動に積極的に関わり、日系人や在留邦人の福利厚生増進に寄与してきた。
さらに日系文化センター・博物館の設立のほか、弁護士としての日系人社会の支援、日加友好団体での活動などにより、日系人社会の発展と友好親善の促進に貢献してきた。
勲記を手にしたバンノ氏(左)と、岡井総領事(右)
多くの参列者に祝福され
総領事公邸には、バンノ氏の家族や親戚のほか、バンノ氏が勤務する法律事務所や関わっている団体などから50人あまりが受賞を祝うために集まり、幅広い活動を行なってきたバンノ氏の人脈の広さを物語っていた。
地元コミュニティと日加友好とに貢献
式ではまず岡井朝子在バンクーバー日本国総領事が挨拶を述べ、バンノ氏に勲記と勲章を授与した。
挨拶の中で岡井氏は、戦後、バンクーバーの法律事務所に就職したバンノ氏が、日本の大手商社などが当地に支店を開設するのを積極的にサポートし、日加間のビジネス拡大に貢献したことを紹介した。
さらにバンノ氏が日系コミュニティにも貢献を惜しまなかったことに触れ、特に当地の日系人コミュニティ活動の中心的役割を果たしている日系プレースについて、そのプロジェクトの最初から精力的に関わってきた同氏の活動を賞賛した。
日系プレースのプロジェクトはもともと、88年にブライアン・マルルーニー首相との間で解決したリドレス運動の結果得られた日系補償基金をもとに開始されたもので、日系カナダ人の歴史の中ではひときわ象徴的なものとなっている。
多くの人の協力があったことを、紹介
続いてロバート・バンノ氏が謝辞を述べた。その中で同氏は、日系カナダ人の歴史の中でも第二次大戦中の日系人強制収用の事実は、日系コミュニティのよりよい将来のためにも語り継がれていく必要があると指摘。その役割も果たす日系プレースは、日系コミュニティの多くの人々の草の根的支援によって達成されたと語り、当日の参加者の中でこのプロジェクトの主要部分に関わってきた人々を紹介した。
また同プロジェクトを全面的に支援してきた日本国政府と在バンクーバー総領事館にも感謝の意を述べるとともに、同総領事館と緊密に連携して、日加間の文化ならびにビジネス面での友好関係を深めることもできたと付け加えた。
物静かな、決断力と実行力の人物
そして元駐日カナダ大使ドン・キャンベル氏が祝辞を述べ、乾杯の音頭を取った。
キャンベル氏がバンノ氏と知り合ったのは、同氏が駐日大使として東京に赴任していた1990年代のこと。バンノ氏が、カナダの法律事務所として初めて東京に事務所を開設する準備のために訪れたことがきっかけだった。またキャンベル氏もその後、この法律事務所に所属、バンノ氏と同僚としての付き合いを続けることとなった。
祝辞の中でキャンベル氏は、物静かなバンノ氏を、水面が静かな川ほど深いというたとえを引き合いに出し、バンノ氏の懐の深い人格を紹介。戦時中の強制収用の体験を持ち、また弁護士として日加関係の強化に貢献するかたわら、日系プレースのプロジェクトに最初から中心人物として積極的に参加し手腕を発揮してきたバンノ氏は、カナダの歴史の一部そのものだと、同氏の功績を称えた。
(取材 平野 直樹)
祝辞を述べる、元駐日大使のドン・キャンベル氏。同氏はバンノ氏と同じ法律事務所の同僚でもある
伝達された勲章を胸に、挨拶を述べるバンノ氏