チャリティー・クッキー
自然食料品スーパー『ホールフーズ』のベーキング・セクションに、震災後並んだ日の丸の形をした赤と白のクッキー。『for JAPAN with Love』と書かれたこのチャリティー・クッキーの製造元はケーキショップ『Kreation』。オーナーでパティシエの勧野佳英子さんの発案だ。
 「震災直後、仙台の甥と連絡が取れるまでに数日かかりました。被災地の人たちのために何とかしたい。でも自分に出来ることはケーキとかクッキーを焼くことなので」と、さっそく取引のあるホールフーズのアメリカ本社に話を持ちかけた。その理由は、購買力から考えると、小売店で売るよりも大手スーパーで販売した方が売り上げを大きく伸ばせること。またホールフーズなら客からの信用もあるので、チャリティーへの信ぴょう性もあると考えたからだ。
企業の社会貢献活動に力を入れるホールフーズだが、オーガニック製品への審査は厳しい。幸運にもキャンビー店を中心にほか3店舗での販売が決まり、売り上げの全額を日本赤十字に回すという協力的な回答を得ることが出来た。

 

キャンビー界隈
ジュエリー・デザイナーだった勧野さんが、食材にこだわりを持ち始めたのはお子さんが生まれてから。身体に安全なものを選んで買ったり、作って食べさせるようになった。
お子さんが8歳になったのを機に、ベーキングとペイストリーのコースを受講。一流ホテルに就職して有名シェフから指導を受ける機会を得たものの、厨房は男の世界。人一倍努力したという。
2007年、独立して『Kreation』を開店。当事キャンビー通り沿いではカナダラインの工事の真っ最中。特に西側は道路が掘り返され路上駐車も出来ず、店舗へは渡し板の上を歩かなければ入ることも出来ないような状態だった。
 「前からここにあったお店にとってはお客さんが離れていくという厳しい状況だったと思いますが、私の場合は失うのではなく、これからお客さまを作っていくという立場でしたから、口コミで広がっていけばいいなと考えていました」。状況をネガティブと考えず、それをゲインと考えるポジティブさ。その背景には、『チョイス』や『ケーパーズ』など自然食料品スーパーもあり、健康意識が高いエリアであることに着目したビジネスセンスがある。

 

こだわりの素材
着色料、保存料を使わず、食材からの自然の発色や、オーガニックの小麦粉を使った製品が割高になるのは避けられない。「値段を見て、怒って帰ってしまったお客さまもいました」。それでも、オーガニックに対する知識の豊富な若い世代を中心に、ナチュラルで安全な素材が定評となり、地元を中心に根強い顧客層を築いていった。
野菜やフルーツのピューレによる自然の発色で、身体に安全かつ彩りの美しいスイーツ。ショーケースには常時16~17種類のケーキと数種のカップケーキほか、クッキーやお菓子が並ぶ。 アレルギー対策には小麦粉の代わりに上新粉(米粉)を使用。結婚式用ケーキや誕生日ケーキも特注可。
オーガニックの小麦粉と、食材からの発色による“赤”を使って焼き上げた日の丸クッキーは、ホールフーズで完売間近だそうだが、ぜひKreation本店でナチュラルなスイーツを試していただきたい。香りのあるアールグレー・チョコレート・ムース、甘酸っぱいライムラズベリータルト、根強い人気のグリーンティー・チェストナッツなど、甘さを控えた上品な風味がワンランク・アップした気分にさせてくれる。

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

Kreation

3357 Cambie St. Vancouver, BC

TEL: 
(604)  871-9119

URL : http://www.kreationartisancake.com

 

勧野佳英子(かんの・かえこ)さん: ニューヨークでジュエリー・デザインを学び、結婚を機にカナダに移住。バンクーバー・コミュニティー・カレッジのBaking & Pastry Program終了。大手ホテルに就職しペイストリー・シェフのテッド原やThomas Haasの元で研鑽を積み、2007年Kreationをオープン。

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