こんなにも日本人のために

「この度の東北大震災の義援金送金の件で、カナダ在住の東京農業大学の先輩(台湾籍)と話したところ、この先輩が慈済基金会のメンバーで、実際募金活動をしているから来てみてくださいと言われたのがこの団体を知ったきっかけです。私も彼らと一緒に募金活動をしたのですが、みなさん一生懸命頭を下げて日本人のために募金を呼びかけているんです。“なぜ台湾の人たちがこんなにも日本人のために”と、感激してしまいました」と、本紙編集部を訪れ報告してくれた頓宮(とんぐう)保さん。
 日本人の間ではほとんど存在すら知られていないこの団体の真意を報道してもらいたいと話す頓宮さんと、先輩の呉明衍(James Wu)さんに同行してもらい、慈済基金会カナダ・バンクーバー本部を訪ねた。


世界47か国にボランティア
1966年、台湾東部・花蓮県の普明寺で證厳上人が家庭の主婦30人を集めて設立したのが同基金会の始まり。当初の主旨は“貧しき人を助け、苦難を救う”ことで、初年には15世帯、31人の独り住まいの老人や身体障害者、生活困窮者の世話を行った。
 現在、世界47か国で慈善、医療、教育・人文、環境保全を基本にボランティアが活動中で、これまで世界70か国で救援活動を行った。
2004年に起きたスマトラ島沖地震による大津波で被害を受けたスリランカでは支援を継続し、2008年ついに新しい学校が完成。同会の多くが仏教徒だが救済国の宗教を尊重し、その文化に沿った形でボランティア活動をするのも特徴だ。
台湾では毎日5万人が、海岸や道端でボトルウォーターなどの容器を回収。それら64本がリサイクル過程を経て繊維となり、一枚の毛布が出来上がる。今回2万枚の毛布が日本に送られた。

 

募金員に厳しい規則
東北大震災後、すぐに始めたのが路上や中華系スーパーマーケット前での募金活動。ボランティアは紺と白の制服を着用し、制服を着て募金活動をする間は、私用で食事や買い物に行くことを禁止。「募金を個人的なものに使っているのではという誤解を招くような行動を避けるためです。ボランティアの食事、交通費もすべて自費です。募金から諸経費を引くこともありません」と呉さん。
 募金箱を持つボランティアは人が来るたびに頭を下げる。万歩計で測ったところ、3時間で3060回頭を下げた人もいた。
頓宮さんは「今たくさんの日本人が何らか形で募金(活動)をしていると思います。でももし、これが母国でなくよその国で起こった災害のためだったら、これほど一生懸命にするだろうかという疑問もあります」と話す。それほど台湾の人たちが日本のために働きかけてくれる姿が印象的だったのだという。
4月11日現在、全カナダでの募金総額は53万ドル。寄付を含むと112万カナダドルが集まった。これらは慈済基金日本の東京本部を通して、救援物資が行き届いていない地域を優先に食事、物資などの提供に、また家や学校建築など長期的な救援活動のために使われるという。

(取材 ルイーズ阿久沢)

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