6月16日、バンクーバー市内の「Tojo's」レストランで岡井朝子在バンクーバー日本国総領事から同レストランオーナーシェフ東條英員(ひでかず)さんに「日本食普及の親善大使」の任命状が手渡された。

 

1970年代初頭と現在のカナダ人の寿司への認識の違いに触れて挨拶

 

日本食普及の親善大使とは

 2013年「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された。これを契機に、日本の農林水産省は世界の食市場を開拓する糸口として、日本食と食文化の普及に取り組んでいる。その一環として昨年開始されたのが「日本食普及の親善大使」の任命だ。昨年任命された13名の同大使には、辻調理師専門学校や服部栄養専門学校の理事長、新日本料理店「神田川」の店主などが名を連ねる。今年新たに国内で8名、海外では9カ国から13名が任命された。カナダではトロントの銀杏(ギンコ)オーナーシェフの木村重男さん、東條英員さんの二名。東條さんは在バンクーバー総領事館が推薦し、農林水産省が認定した。推薦の理由を「東條さんの実績、パーソナリティに加えて、地域に和食を広げていく力にあります」と、任命式の挨拶で岡井総領事が語った。

 報道陣を前に東條さんは、「任命を誇りに思います」と挨拶。そして「地元の食材を生かし、 日本流でありながらも北米の人々を惹き付ける料理を生み出すことが自分の仕事」と語り、 「今後も太平洋をはさんで日加両国を食でつなぎ、活発な交流が続いていくように尽力したい」と締めくくった。

 

東條さんに寄せる期待

 東條さんは1968年大阪の料亭でシェフを開始。1971年にバンクーバーに渡り、数店のレストランに勤めた後、1988年に 「Tojo's」を開業。世界に広まったカリフォルニアロールの生みの親であり、BCロールも彼の創作である。

 そして北米の雑誌、テレビへの出演多数である東條さんに「さらに日本食についての世界への発信を期待しています」と岡井総領事は語る。東條さんの大使としての具体的な活動内容は、今後の検討課題。活動案の例として、「まだ相談前のこと」と前置きして岡井総領事は「日本食と日本酒の普及を一緒に行うことや、日本食レストランのスタンプラリーの企画なども考えられます」と紹介。また日本食の啓蒙活動を通じて、日本の地方の産品、ユニークでこだわりの食材を世界に紹介していけたらとの思いもあるという。

 

小学生の時から 食事作りを担当

 「英員は小学校の高学年の時から家族9人の食事を作っていました」と語るのは、この任命式で東條さんを見守るため、大阪から来加した兄の東條圀員さん。その理由を東條さん本人に尋ねると「おふくろが今で言うベジタリアンでした。周りの友人が食べている肉を自分も食べてみたかったから、自分たちで作るしかなかったんです」。7人兄弟の6番目だった東條さんが「家族の中で料理をする担当」であったのだという。

 東條さんがバンクーバーに来た当時は、カナダ人は日本食に見向きもしなかった。そんな中、「知られていないものの認知度を上げていくのが僕は好きなんです」という東條さんの取り組みがスシブームに大きな役割を果たした。今後の日本食普及の親善大使としての働きに注目が集まりそうだ。

(取材 平野香利)

 

農林水産省発行の「日本食普及の親善大使」任命状が手渡された

 

報道に駆けつけた地元テレビ局の取材にも応じた岡井総領事と東條英員さん

 

きれいに飾りつけられた手まり寿司と巻き寿司

 

この日、日本酒の輸入会社から出席者に日本酒が振る舞われた

 

日本食普及の親善大使について紹介する岡井朝子総領事

 

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