4月23日、バンクーバー日本語学校のキンダークラスに6年生が着物姿で登場。その姿は児童たちの目に大人のように写ったことだろう。 

 

紙芝居を演じる6年生には読み聞かせの練習に、キンダークラスの児童にとっては聞く練習になる 


キンダークラスで上級生が紙芝居を披露

 5月には運動会、文集作り、学習発表会、6月には卒業式を控え、年度のラストスパートにかかっている同校。日頃注力している日本文化の教育も締めくくりの時期だ。

 昔話は日本文化の宝庫。それを用いた紙芝居は、言葉の読み聞きの学習にもなる。この日、児童に読み聞かせを担当したのは6年生の此島(このしま)はなさんと、片平樹木(かたひら・きき)さん。

 初めに先生が「始まるよ!始まるよ!」と歌うように手拍子。それに合わせて児童たちも手拍子で二人を迎えた。そして二人は同校手作りの紙芝居の木枠の窓を開け、「昔々あるところに」と『一寸法師』の読み聞かせを開始した。

 地の文と会話の文、それぞれに調子を変えて、すらすらと朗読する様子は見事。絵を入れ替えるタイミングも上手にこなし、滞りなく朗読は終了した。聴いていた児童たちの落ち着きぶりもなかなかのものだった。

 

本物の日本文化を継承する さまざまな取り組み

 樹木さん、はなさんは、日本のことが大好き。「着物もお祭りも、お菓子も料理も」と口を揃えて語る。そして二人とも、カナダと日本の二つの文化を身につけ言葉も使えることを、うれしく誇らしく思っているという。

 そんな二人の様子を傍らで見守っていた同校主任の内藤邦彦先生に話を聞いた。 「当校には、日本語の運用能力を高めるだけでなく、日本文化、それも本物の日本伝統文化を子供たちに伝えていこうという精神があります」。ただしそれは、現代的な日本文化を否定するものではない。同校が子供たちに望んでいることは「昔からあるものを大事に」、そして伝統的な日本文化の奥底に流れるものを「全人格的に体の中に取り入れること」だ。

 日頃の日本語学習の中で、俳句やかるたなどの取り組みがあることはもちろん、課外活動には習字などのクラスがある。さらに同校で開催される能や雅楽などのステージの見学や、武道や和楽器の達人から話を聞く機会など、文化学習をさまざまな形で実施している。

 また地域の学校の生徒たちが同校を見学する機会もしばしばある。その際には茶道、書道、日本舞踊、着物の着付け、けん玉、コマ遊びなども紹介している。

 多目的に使える多数の教室や大ホール、昔から築いてきた人脈といった同校の貴重な財産は、日本の伝統文化を継承する人間作りに生かされているようだ。

(取材 平野 香利)

 

今回紙芝居を担当しなかった6年生の女子生徒にも 着物姿での朗読の予定がある

 

「日本の昔話は(現実にはない)ファンタジーがあるところが好き」(写真右 片平樹木さん)「こういう発表をすると気持ちがすっきりします」(写真左 此島はなさん)

 

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