今季ホームで初白星。その得点のきっかけを作ったのが今季初先発の工藤。理想的な試合展開とはいかなかったものの、満員のファンの前で初勝利を挙げ、ようやくホワイトキャップスのエンジンが唸り始めた。

 

試合開始15分、工藤のシュートは惜しくもGKの好守に阻まれる

 

3月26日(22,120)バンクーバー ホワイトキャップスFC  1 -0  ヒューストン・ ダイナモ

23分、FW工藤(#9)が相手DFアニババと交錯し、ホワイトキャップスにPKのチャンスをもたらすと、MFモラレス(#77)が決め1―0。この1点を守り切った。

「今日は楽しもうと思ってプレー」

 「この状況を楽しむというのを意識しながらもチームのために」と工藤。今季4試合目での初先発を振り返った。試合開始から全力プレーがひと際光った。11分にはこの日ツートップを組んだFWリベロ(#29)へ左からパス、15分にはDFをかわし絶好の得点チャンスにシュートを放つも、真正面で受け止めた相手GKウィリスの好守に阻まれ、初ゴールとはならなかった。「もう少し冷静にプレーできればよかったんですけど」

 それでも23分、MFマニー(#23)からのパスを受けた直後にダイナモDFアニババの背後からのフィジカルプレーでPKを奪い、 この試合の唯一の得点を演出した。「ゴールというところを要求されてたんで、そこで貢献したかったんですけど、 まあ、アシストというかね」と照れ笑い。それでも 「とりあえず、PK取れたというのはまずまずなのかなって思います」とどんな形であれ得点に絡めたことは収穫だった。

 「ゴールできなかったのは本人も残念に思っているだろう」と記者会見でのロビンソン監督。「いい動きをしていた。あれが彼の持ち味」と工藤のプレーを評価した。

 先発を、当日の2時間前のミーティングで告げられた。練習の時からなんとなくそんな雰囲気はあったという。「日本でも試合数はこなしているので、だからと言って緊張するわけじゃないですけど、先発が決まったからには冷静に自分の時間を大切にしながら試合に臨みました」

 ホームで初先発という機会に恵まれたこの日、試合前会場で先発メンバーとして名前が告げられると大歓声を受けた。「サポーターの声の大きさと比例して、期待の大きさを感じます。嬉しくもあり、いい意味でのプレッシャーでもありますね」。試合後には熱狂的な公式サポーターグループCurva Collectionのいるファン席に引きずり込まれ、嬉しい洗礼も受けた。「今日は楽しむっていうこと、次はゴールというところでもっと貢献していければ」と次の活躍を誓った。

とにかく勝ち点3が必要だった

 3試合連続PKでの得点のみ。決定力不足をなかなか解消できないシーズン立ち上がりに、どんな形であれ「勝ち点3を取ることが目的だった。その意味では今日は目的を果たした」とロビンソン監督は強調した。国際大会出場のため主力4選手を欠いていた。「他の選手が埋めてくれた。最初の30分くらいはたぶん今季の中では一番よかった」と語った。

 しかしそれ以降は精彩を欠いた。GKウーステッド(#1)は「最初の25分(PKで得点するまで)は、ホームでやりたいと思っていた通りの試合運びができたと思う。その後は、思うようにボールも取れなかったし、動きも悪かった」と振り返った。工藤も「前半の途中から後半とチームとして難しい状況で、なかなかボールが落ち着かない、相手がボールを持つ状況が多かった」と同じような感想を口にした。「それでも1―0で勝てたということが重要。いつもいい内容で試合ができるとは限らない」とウーステッド。無失点だったことは大きな収穫と語った。

 チームはこれで2連勝。ようやくエンジンがかかり始めた。来週はホームにLAギャラクシーを迎える。この日詰めかけた満員のファンの次の願いは、豪快なゴールラッシュに違いない。

(取材 三島直美 / 写真 斉藤光一)

 

4月のホームゲーム

4月2日(土)7pm LAギャラクシー戦
4月23日(土)7:30pm FCダラス戦
4月27日(水)7:30pm スポーティング・カンザスシティ戦 

 

モラレスがPKを決め、喜ぶホワイトキャップ選手たち。ダイナモのコイル監督は「あれはPKになる反則とは思わない」と審判の判断に疑問を投げた

 

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