2008年9月10日 第37号 掲載


赤堀正明氏

パンパシフィック日産リッチモンド、サレー社長&CEO

赤堀正明(あかぼりまさあき)氏



日本のサービスは質が高い。そのため日本に慣れ親しんだ人が海外に出ると、サービス の質に満足できないことが多い。しかしパンパシフィック日産リッチモンドでは、その心配はないだろう。1987年の創立から、22年間にわたりカスタマー ケアに根ざしたきめ細かいサービスを心がけてきたリッチモンド日産。2008年にはサレーに新たな販売店をオープンし、社名も環太平洋を視野に入れたパン パシフィック日産リッチモンドとなった。そして2009年6月1日、今後の成長が期待される同社の社長&CEOに赤堀正明氏が着任した。

今、自動車業界で地殻変動が起きている
昨年のビッグ3の経営悪化に伴ってそれを支えている部品メーカー、販売会社も大きな影響を受けている。赤堀氏はその影響について「マグニチュードで言う と6か7ぐらい。地殻変動が起きている」と語る。この地殻変動の中でどの会社が生き残るのか。自動車業界は今、非常に大きなターニングポイントにさしか かっている。

少子化や大都市の公的交通機関の発達もあり、今後の日本の自動車市場に大きな伸びは期待できない。その中で限られた経営資源をこれからどの市場へ投入す るのかが問題となる。販売会社の経営戦略は、やはり伸びゆく海外市場への進出だ。車が生活必需品であるカナダは安定した伸びを見せている魅力的な市場だと いう。

二つの市場:リッチモンドとサレー
22年の歴史を持つリッチモンドの販売店と、昨年オープンしたばかりのサレーの販売店。赤堀氏は両方の経営責任者として日々情報を収集し、市場のニーズ に合致した自動車販売を目指している。リッチモンドとサレーという二つの市場は大きく異なり、それぞれに魅力があるという。人口約18万人のリッチモンド は中国系の消費者が多く、高級車や値段の高い中古車の需要が大きい。そして人口約40万人のサレーはカナダの中で最も急成長している都市の一つであり、比 較的値段の低い車や建築関係の商業車の需要が高いそうだ。サレー店の取得により隣接する広域な2地区の販売権を得たことで、ここを北米ビジネスの本拠地と したい考えである。

今後の10年間は自動車業界にとっての転換期
今、自動車産業には大きな技術のうねりが出ている。消費者は環境にやさしく燃費の良い車を求めており、これからの10年間は技術革新によりオイル燃料に 依存しない全く新しい自動車コンセプトの時代を迎える。赤堀氏はこの転換期の中に大きなビジネスチャンスがあると考える。日産自動車は8月上旬にゼロ・エ ミッション車を公表した。電気自動車を量産していこうという動きの中で、日産は世界をリードする自動車メーカーである。カナダの消費者は環境に対する意識 が高いこともあり、電気自動車を来年または再来年からカナダ市場に投入する計画もあるそうだ。「マーケットの底」である2009年から、今後は伸びゆく時 代になると赤堀氏は確信している。

親しまれ愛されるディーラーを目指して
リッチモンド日産は過去9回にわたって顧客満足度最優良店に選ばれるなど、カナダのトップディーラーだ。カナダにある150の日産ディーラーの中でも20社しかないスーパーカーGTRの正規販売店の一つでもある

「お客様にどれだけ親しまれ、愛される販売店を目指しているかというのが重要なポイントとなる」と赤堀氏は強調する。親会社である東京日産が長年培って きた「お客様のウォントを先取りする、かゆいところに手が届く、日本流のきめの細かいおもてなしの心を実践する企業文化」をカナダでも構築するのだ。パン パシフィック日産リッチモンドでは日本語を含む14カ国語でお客様に対応できるグローバルな体制が特徴のひとつであり、大変好評を博している。

赤堀氏の趣味はクラシック音楽と絵画鑑賞。リッチモンドオートモール内の販売店にある赤堀氏のオフィスの壁には美しい風景画が飾られていた。お酒が好き で、お酒のおつまみを作っているうちに料理上手に。リラックスしたい時には気のおけない人たちを自宅に招き、日本料理やイタリア料理を振る舞うそうだ。今 はまだデトロイトから来たばかりだが、大きな日系人コミュニティーのあるバンクーバーで、これからたくさんの素敵な出会いがあることを願っていると赤堀氏 は語った。

(取材 船山祐衣)




赤堀正明氏 プロフィール

青山学院経営学部卒業。73年4月に日産自動車に入社。 79年米国イリノイ大学経営大学院に社費留学しMBA取得。89年より同社の北米販売課長、93年より日本地区販売マネージャーを経た後、97年より北米 日産フォークリフト社社長としてシカゴに赴任。2005年より09年までJATCO USAの社長を務め、09年6月1日よりパンパシフィック日産リッチモンド、サレー社長&CEO。

 

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