2010年6月3日 第23号 掲載



JTBインターナショナルカナダ取締役副社長

翁長 功(おながいさお)氏



旅行者のニーズが多様化する中で、 JTBインターナショナルカナダ(以下、JTBIカナダ)は今、教育旅行や観光関係のセミナーの開催など、さまざまな新事業を展開している。JTBIカナ ダ取締役副社長の翁長功氏は、今後JTBIカナダは旅行会社としてだけではなく、交流文化産業の会社として成長していくと語る。
元バンクーバー支店長で、過去3年間はロサンゼルス支店長(JTBインターナショナル副社長兼務)として活躍し、2010年4月1日付けで取締役副社長として再びバンクーバーに帰って来た翁長氏にインタビューした。

交流文化産業の重要性について
近年、海外旅行に出かける日本の若者が減ってきている。その理由の一つはインターネットの普及だ。例えば、インターネットで「マチュピチュ」と検索し、 その写真を見ることで、すでにマチュピチュを知ったつもりになっている。これは若者にとって、そして日本にとって、大きな損失ではないかと翁長氏は語る。 異国を旅行し、現地の人々と触れ合うことで、私たちは人間として成長することができる。JTBIカナダにとっての大きなテーマは、文化交流という若者に とっては特に重要な情操教育の機会を、さまざまな事業を通して発展させていくことだ。

観光学部で学ぶ若者のための学校事業
JTBIカナダが特に力を入れているのは、教育旅行だ。他の学校と提携して顧客の教育旅行の手配をするだけでなく、JTBIカナダバンクーバー支店があ る建物の中に教室を作り、学校事業も始めている。約3年前に開始した観光業のキャリアプログラムでは、日本の大学の観光学部で学ぶ若者が、夏休みや冬休み などを利用して外国での経験を積むことができる。午前中は観光関係の英語やリーダーシップに関する講義を受け、午後にはバンクーバー支店内や空港、また フェアモントホテルバンクーバー内にあるJ-Stationを含む斡旋現場などを訪問し、現場で仕事を学ぶというユニークなプログラムだ。観光業界の将来 を担う人材にとって、これほど有意義な教育旅行はないだろう。

人が集まるバンクーバーでの新事業
今年2月には冬季五輪も開催されたバンクーバーは、世界中から人が集まる魅力的な街だ。治安が良く、教育レベルが高く、環境保全などの分野で優れている ことでも知られるバンクーバーでは、数々の国際的な展示会やミーティングが開かれている。翁長氏が今後の成長分野として注目しているのは、このように多く の人が集まるイベントを主催・支援することだ。運輸業、ホテル業、飲食業など、旅行から派生するさまざまな事業に携わる企業との協力関係を強化していくこ とも検討している。

アジアの消費者の需要に注目
2008年から2009年にかけては景気の悪化や新型インフルエンザの影響を大きく受けたJTBIカナダだが、今年に入って業績は急回復しているとい う。外国からカナダに来る顧客およびカナダから外国に行く顧客のための手配・斡旋、車両やガイドの管理など、その業務は多岐にわたるが、翁長氏は「長年の 経験に基づいた直感」を大切にしながら、大きな視野を持って仕事を進めている。現在日本人の旅行者は減少傾向にあるが、アジア全体を見ると旅行市場は拡大 し続けている。アジア市場の開拓に力を入れるため、2年前には中国系のエージェントを吸収合併し、特にバンクーバーに住む中国系の顧客を増やすための努力 を続けている。

物事すべてがサイクル
ストレスの多い仕事を長年にわたりこなすためのコツを翁長氏に聞いてみると、「楽観主義」という返答を得た。「私の人生観では、物事すべてがサイクル。 良い時から悪い時、悪い時から良い時と、サイクルで物事は動く。良い時にもあまり喜ばず、苦しい時にもあまり悩まず、淡々と物事を見ながら、仕事を進めて 行く。やれることはやり、あとは自然の成り行きに任せて。いろいろなことで悩むけれど、二日悩んだら、三日目にはもう忘れる。クヨクヨ考えてもしょうがな いから」と、翁長氏は朗らかに笑った。長年の経験が詰まった言葉が記者の心に響いた。

(取材 船山祐衣)






翁長功氏 プロフィール

1978年、ブリティッシュ・コロンビア工科大学経営学部 卒業。1982年、サイモンフレーザー大学経済学部卒業。1984年、JTBIカナダ入社。2003年、バンクーバー支店長に着任。2007年にJTBI 取締役副社長およびロサンゼルス支店長としてロサンゼルスに移り、2010年4月1日より、JTBIカナダ取締役副社長として再びバンクーバーへ。

 

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