マイケル・オデンさんと唐沢良子さん夫妻のコレクションを展示する
今年3月、ウィスラーに新しい美術館がオープンする。マイケル・オデン(Michael Audain)さんと唐沢良子さん夫妻が収集してきた芸術作品を展示する「Audain Art Museum」だ。BC州のアーティストの作品を中心とした多彩な展示への期待はもちろん、ウィスラーの自然の中に美術館が建てられたことでも注目を集めている。1月27日、UBC(ブリティッシュ・コロンビア大学)ロブソン・スクエアでマイケル・オデンさん自らがスピーチを行い、この新しい美術館にかける思いを語った。会場にはアーティストや芸術愛好家など200人を超える人々が集まり、スピーチに熱心に耳を傾けた。
UBCロブソン・スクエアでスピーチするマイケル・オデンさん
人生を共に過ごした芸術作品の数々
現在78歳のオデンさんが、芸術に興味を持ち始めたのは、BC州ビクトリアで過ごした幼少期からだった。20代になると心を惹かれた芸術作品を少しずつ収集し始め、その後長い年月をかけて大規模なコレクションを築いた。「人生を共に過ごしてきた芸術作品がずっと住み続けられる家を残したい」その願いが美術館建設を目指すきっかけとなった。
ウィスラーの自然に囲まれた美術館
オデンさんと唐沢さんは共に自然愛好家。美術館をオープンするならば、森の中に自然と調和したものを建設したいと考えていた。もともとウィスラーに馴染みはなかったが、文化観光の発展を目指すウィスラー市関係者の協力もあり、ウィスラー・ビレッジの中心部に理想的な土地を見つけられた。内装に木材を多く取り入れた5万6千平方フィートの美術館はPatkau Architectsがデザイン。現在は3月のオープンに向け、常設展と企画展の準備が着々と進んでいる。スピーチの中でオデンさんはスライドを使用し、絵画、写真、彫刻、面など魅力あふれる展示品の数々を紹介した。
BC州の芸術作品を次世代の子どもたちに
オデンさんと唐沢さんが特に重要だと考えるのは、未来を担う子どもたちが芸術作品に触れる機会を持つこと。子どもは感性豊かで、芸術作品とコミュニケーションをとり、アーティストがそこに込めた思いを感じ取ることができる。大人になってからでは遅く、幼い時期に芸術作品と向き合うことが大切だ。そのため美術館の入館料は、17歳以下は無料とした。
唐沢良子さんからのメッセージ
美術館の準備に奔走してきた唐沢さんは3月の開館が決まり、「やっと目的達成ですね」と笑顔で語った。「BC州はとても特別な、素晴らしいところ。海があり山があり、雨が降って霧が出る。先住民族はこの地で長い間、自然と共存してきました。現代の人々が忘れかけている自然へのリスペクト。それが表現されているBC州の芸術作品を残して、特にこれからを生きる若い世代に広く知ってもらいたいと願っています」
オデンさんと唐沢さんの愛する芸術作品と熱い思いが詰まった美術館は、訪れるたくさんの人々の人生をより豊かにしてくれるだろう。
(取材 船山祐衣)
Audain Art Museum
4350 Blackcomb Way Whistler, BC
「Audain Art Museum」の外観。ウィスラーの自然との調和が美しい