地域と歴史のために半世紀1965年に創立されたBC州和歌山県人会は今年、50周年を迎えた。
それを記念する桜の若木が13日、ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市スティーブストンにある、工野庭園に植えられた。
当日は和歌山県人会関係者のほか、リッチモンド市からも代表など約40人が参加、同県人会の50年の足跡に思いをはせながら、桜の植樹を祝った。
工野庭園は、かつてスティーブストンの漁港を拠点にしていた和歌山県移民の漁師らが行き来した、フレーザー川河口のギャリーポイント公園にあり、和歌山県から最初の移民、工野儀兵衛が当地に到着してから100周年を記念してBC州和歌山県人会が造園したもの。
記念樹の周りでスコップを持つ(左から)BC州和歌山県人会会長水田治司さん、リッチモンド市市議会議員ビル・マクナルティさん、同市議会議員(市長代理)リンダ・マクフェイルさん、同県人会元会長平野政巳さん、ジム田中さん
コミュニティに、多大な貢献
リッチモンド市は、同県人会がギャリーポイント公園に工野庭園を建設したことや、255本の桜を同公園に植樹したことなど、コミュニティに対して多大な貢献をしてきたことを記念するため、3月27日を和歌山県人会の日と定めている。255本の桜の植樹は、2000年から13年の歳月をかけて完了させた長期プロジェクト。また工野庭園が完成したのは1988年のことだった。
また工野庭園も桜の木も、世代を超えて日系人移民の歴史を伝えるため、そのプロジェクト完了後にリッチモンド市に寄贈されている。今でも和歌山県人会のメンバーがその手入れを一部行っているが、公共の歴史資産としての維持管理は、リッチモンド市にゆだねられている。
また同県人会の功績は、人的交流の面にも大きな足跡を残してきている。リッチモンド市と和歌山市が姉妹都市として提携したのは1973年だが、この時にも、両都市の間を取り持ったのが同県人会だ。
市から、感謝の言葉
植樹式には、リッチモンド市から市長代理の市議会議員リンダ・マクフェイルさんをはじめとする市関係者が出席、BC州和歌山県人会が50周年を迎えたことを祝った。
祝辞の中でマクフェイルさんは、今年3月のBC州和歌山県人会の日の制定から始まった、50周年を祝うリッチモンド市の行事の締めくくりとなる今回の植樹式に出席でき光栄だと述べた。また同県人会が100年以上になる和歌山県からの移民の歴史を後世に残す努力と、当地における日系人コミュニティへの支援に尽力してきたことに触れるとともに、工野庭園と植樹された255本の桜の木のリッチモンド市への寄付や、5年ごとに行われている和歌山市からの代表団を招いての姉妹都市提携記念行事でも中心的役割を果たすなど、市に対する貢献に深く感謝すると述べた。
植樹式のあと、スティーブストン日系文化会館での会食があり、リッチモンド市のこれからの日本との親善行事の予定(日本の帆船、海王丸を2017年に招致など)について、マクナルティさんから説明があった。
スティーブストンと和歌山県人会、そして桜と和歌山県の木
式典後、同県人会会長の水野治司さんは工野庭園には桜だけではなく、和歌山県の木であるウバメガシ(ブナ科の常緑樹)も今年4月に植えられたと話してくれた。この庭園が造られてから30年以上が過ぎ、造園に携わった当時の人はほとんどいないという。それでも庭園がきれいに維持されてきたのは、これを引き継いだ市のおかげだと語り、この地での和歌山県人移民の歴史が、世代を超えて伝えられていくことを願うと語っていた。
(取材 平野 直樹)
工野庭園に植えられた桜の若木を前に、祝辞を述べる市長代理のリンダ・マクフェイルさん(中央)
県人会の歴史とともに歩んできたメンバーの方々(左から)元会長林栄造さん、元理事村尾喜美代さん、元理事酒井登美子さん、元会計西敬次さん、元会長田中静夫さん、元理事村尾敏夫さん、会長水田治司さん