在バンクーバー日本国総領事館公邸で11月5日、JETプログラム帰国者歓迎会が開催された。日本政府主催の大規模な国際交流事業であるJETプログラムは、外国語の教育支援を通じての地域レベルの国際化を目的としている。プログラム開始から今年で29年目を迎え、のべ65カ国、6万2000人以上が参加したことになる。
渡名喜島の人々から心温まる見送りを受けてピースサインをするアンドリュー・ミラーさん(写真提供 アンドリュー・ミラーさん)
カナダと日本をつなぐ親善大使としての活躍に期待
会の冒頭、岡田誠司在バンクーバー日本国総領事は「プログラム開始当初は日本の英語教師と、派遣されたアシスタントティーチャー間のコミュニケーションに困難を来していたが、現在は英語指導にかかわる国際交流として、とても成功しているプログラムの一つとなっている。あなたたちJETプログラム経験者は日本とカナダの交流における重要な存在。ぜひこれからカナダでも日本とつながりを持って、さまざまな取り組みを一緒に行っていきましょう」と挨拶。次にBC州日加協会会長のスティーブン・アーチャーさんが挨拶に立ち「トヨタ方式のように日本の優れた考えを、ぜひカナダでの問題解決に生かして」と呼びかけた。そして 同プログラム参加者が前に出て日本の滞在中の印象的な出来事を生き生きと語った後、食事と交流の時間となった。
帰国者が語る日本での体験の数々
北海道・東川町の全校生徒150人の小学校に1年間赴任したテイラー・バネットさんにとって、印象深いのはハロウィーンのイベント。バネットさん自身が計画したこの会で、子供たちは仮装を楽しんだ。バネットさんが英語指導の際には絵やゲームを豊富に取り込んで、楽しい授業を心がけたという。
メラニー・アップスさんは広島県の呉市の小中学校で英語のアシスタントティーチャーを務めた。校内の吹奏楽部に参加し、生徒たちと音楽を楽しんだほか、地域の太鼓のグループにも参加し、喜びで心がいっぱいになる瞬間をたくさん経験。交流した人々からは思いやりの深さやモラルの高さを強く感じたという。
沖縄の本島から船で2時間の渡名喜島に渡ったのはアンドリュー・ミラーさん。幼小中学校合わせて生徒数30人という学校で5年間を過ごした。島への到着直後に習った沖縄の踊り「カチャーシー」、他の島からも見学者が来る水上運動会への参加など数えきれない思い出がある。ミラーさんの離任式には、地元の新聞社2紙が取材にやってきた。カナダに戻って来た現在は「これからさらに勉強し、単位を満たしてカナダの学校の日本語教員に」と希望している。
帰国者を支援するネットワークも
帰国者歓迎会での乾杯の際に「日本の生活経験で得た、桜や紅葉を愛でたり、繊細な味を感じとる感性をカナダでも生かして」と語ったのは、自身も約10年前にJETを経験したマイケル・ダリーさん。ダリーさんが会長を務めるJETプログラム同窓会BC州・ユーコン州支部では、帰国者の貴重な経験を生かすための情報提供やワークショップ開催、木曜会との合同イベントなどネットワーキングの機会を作っているという。記者にとっては草の根の国際交流の担い手たちの姿を身近に感じた帰国者歓迎会だった。
(取材 平野香利)
乾杯時の挨拶をするJETプログラム同窓会BC州・ユーコン州支部会長マイケル・ダリーさん
北海道のほぼ中央の町・東川町に赴任したテイラー・バネットさん
日加交流の担い手となることを期待する言葉を語った岡田誠司総領事