日本は4位 カナダ最下位

ワールドカップに向け課題も見えたトーナメント

 

カナダ、アメリカ、フィジーで行われたラグビーのパシフィック・ネーションズ•カップ(PNC)2015。8月3日にバーナビー市スワンガード・スタジアムで最終順位決定戦3試合が行われた。第1試合の3位決定戦に臨んだ日本はトンガと対戦。惜しくも敗れ、4位となった。

 

試合終了後、握手する両チーム。8月3日 日本対トンガ(Photo by Miyuki Nakamura)

 

 今年のPNCは、9月にイギリスで開催されるラグビーワールドカップへの調整も兼ねた大会としても注目されていた。日本はW杯で、この大会に出場したサモア、アメリカと同じグループに属している。アメリカとは直接対決、サモアとは試合がなかったものの、格上のフィジー、似たタイプのトンガと対戦。W杯を見据えた戦いとなった。

 PNCは参加6カ国が2グループに分かれて戦うトーナメント。Aグループは、サモア、トンガ、日本。Bグループが、フィジー、アメリカ、カナダで、予選は3試合、同グループ以外の3チームと対戦した。

 日本は7月18日、カリフォルニア州サンノゼでカナダとの第1戦を迎え、20ー6で白星発進した。しかし7月24日、カリフォルニア州サクラメントでのアメリカ戦では、前半で逆転するも後半に再逆転され18ー23。これまで対戦成績のよかった相手アメリカに黒星を喫した。7月29日、トロントでの第3戦。格上フィジーを相手に、一時はリードしながら逆転はされたものの、終盤1トライで逆転勝利というところまで追い上げた。結果は22ー27で、日本は予選を1勝2敗勝ち点6の4位で、8月3日トンガとの3位決定戦に進んだ。

 カナダは、初戦の日本戦に負けると、7月24日、スワンガード・スタジアムでのトンガ戦では後半に逆転され18ー28で2連敗。7月29日、トロントでのサモア戦は後半に逆転されたものの終盤追い上げ20ー21と惜敗した。カナダは予選で1勝もすることなく、最下位でアメリカとの5位決定戦に臨んだ。

 

日本はトンガに勝てず4位

 日本らしさが見られない試合だった。勝てない相手ではなかった。大会前の世界ランキングでは、トンガ12位、日本13位。ベストメンバーが揃っていないトンガ相手に、トンガより上のサモアとのW杯の対戦を考えれば、負けるわけにはいかなかった。

 ペナルティキックで得点を重ねる日本に対し、30分、トンガがこの試合最初のトライを決め6ー10と逆転。しかし、そのすぐあと32分に日本のツイヘンドリックがトライを決め11ー10と再逆転。しかし、54分にトライを、試合終了間際の79分にはトライとコンバージョンを決められ、万事休した。日本は後半にペナルティキック3本を決めたが、逆転するには至らなかった。後半の追い上げを得意とする日本のラグビーが、後半はトライを1本も決められず、持ち味のテンポの速いラグビーもできないまま、今大会3敗目を喫した。

 「すごく悔しいです。自分たちの強さを全く出せなかったので」とリーチマイケル主将。ブレイクダウンでボールが出せなかったこと、ペナルティ、ショットの選択肢でリズムを作る時間がなかったことが要因と、振り返った。

 アメリカ、フィジーとの試合でも、この試合でも、勝てる試合で勝てなかったという反省はあるが、学べるところも多かったと語り、「ワールドカップの前にこの大会に参加できてよかった」と締めくくった。

 エディー・ジョーンズ監督は、記者団の前に姿を現さなかった。

 日本は今後、8月に国内で国際試合3試合をした後、9月にイギリスに入りグルジア代表と試合を行った後、W杯の開幕を迎える。

 

カナダは1勝もできず最下位

 カナダは今大会4戦全敗。1勝もすることなく最下位に終わった。この日のアメリカとの対戦も、あと1分ディフェンスで無得点に抑えられれば勝利という残り1分以下で逆転負けした。

 とにかく小さなミスの連続だった。トライのチャンスは何度もあったが、自らのミスで得点に結びつけることができない、そんな試合だった。アメリカの方が実力で大きく上回っているというわけではない。この試合、カナダは1トライを決めたが、アメリカはトライを一つも決めることなく試合に勝っている。

 この日ケガで欠場したテイラー・アードロン主将に代わり、主将を務めたアーロン・カーペンターは、「また残念な敗け試合だった」と振り返ったが、それでも「順調にはきている」と調整中の一つの大会として、いい方向だったことを強調した。「チームが集合したのは約3週間前で、他のチームはもう少し長いはず。レベルの高い海外チームと試合ができる機会となったこの大会で、負けはしたが僅差の試合ができて収穫はあった」と大会を総括した。祝日にもかかわらず多くのファンが詰めかけたことに感謝し、ラグビー人気が上がっていることを感じると、9月のW杯、来年のオリンピックへつながることを期待した。

 キーラン・クローリー監督は厳しい表情ながら「(この大会では)チーム強化が目的で、結果にだけ固執しているわけではなかった」とまとめた。近々、W杯メンバーを決定しなければいけない時期に「若い選手の活躍が見られたのは良かった」と、ポジティブな面を語った。

 

優勝はフィジー

 決勝戦は、2勝1分の負けなしだったフィジーとサモアの対戦となった。予選でも対戦している両チーム。その時は30ー30の引き分けだった。しかし、優勝を掛けた一戦は、序盤から一気に攻撃をかけたフィジーが後半粘るサモアを突き放し勝利。パワーとスピードがぶつかる両チームの見応えのある戦いは、フィジーに軍配が上がった。

 

世界7人制ラグビー大会が来年はバンクーバーに

 来年ブラジルのリオデジャネイロで開催される夏季五輪から正式種目なる7人制ラグビー。その世界大会が来年3月にバンクーバーで開催される。

 世界10都市でトーナメントを行い、そのポイントで優勝を争う、HSBC世界ラグビー・セブンズ・シリーズ。その2015〜16年シーズンの10都市の一つがバンクーバーに決まった。大会期間は3月12、13日。

 2014〜15シーズンの今季、カナダは11位、日本は15位につけている。

(取材 三島直美)

 

最終順位

1位 フィジー 2位 サモア 3位 トンガ 4位 日本 5位 アメリカ 6位 カナダ

 

後ろからのタックルを避けながら走るカナダのティーデマン。7月24日カナダ対トンガ(Photo by Sam Maruyama)

主将アードロンを先頭に入場するカナダ代表。7月24日カナダ対トンガ(Photo by Sam Maruyama)

途中出場した唯一の日系選手ヒラヤマ。7月24日カナダ対トンガ(Photo by Sam Maruyama)

スクラムを組む体制を取る両チーム。7月24日カナダ対トンガ(Photo by Sam Maruyama)

トライ寸前のカナダを阻むトンガ。7月24日カナダ対トンガ(Photo by Sam Maruyama)

トンガ代表が試合前に行う儀式。7月24日カナダ対トンガ(Photo by Sam Maruyama)

フルバック五郎丸。この日は5つのPKを決めた。8月3日 日本対トンガ(Photo by Miyuki Nakamura)

トンガのタックルを受けながらも前進する小野。8月3日、日本対トンガ(Photo by Miyuki Nakamura)

この日唯一のトライを決めたツイ。8月3日 日本対トンガ(Photo by Miyuki Nakamura)

日本のラインアウト。8月3日 日本対トンガ(Photo by Miyuki Nakamura)

トンガのディフェンスを突破するコリニアシ。8月3日 日本対トンガ(Photo by Miyuki Nakamura)

ウイング藤田。8月3日 日本対トンガ(Photo by Miyuki Nakamura)

スクラムハーフ田中。8月3日 日本対トンガ(Photo by Miyuki Nakamura)

試合後、記者団に囲まれる主将リーチ。8月3日 日本対トンガ(Photo by Miyuki Nakamura)

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