引き出し豊富でマジック飛び出すピアノレッスン

Blue Sky Music Studio 柏谷麻友さん

 

 

ブロードウェイ(@メイン)とジョイス駅近くで教室を開く柏谷麻友(かしたにまゆ)先生と志乃ちゃん

 

 

 レッスンで『主よ人の望みの喜びを』を演奏する6歳の志乃ちゃん。しっかり練習した様子にマユ先生は「すごい!すごい!」と大絶賛だ。その後「先生が志乃ちゃんに言う事があるとするとムム」と切り出した。「これは神様守ってくださってありがとうっていう曲だったね。だけれども最後の方がシュッシュッポッポと走っていたよね」。うなずく志乃ちゃん。先生がリズムを取って再度トライ!今度はすっかり落ち着いた演奏になって志乃ちゃんも先生も満足満足。マユ先生のところに来る前は、ピアノが嫌になっていたというが、今では時に2時間も早起きして練習するほどの熱心さだ。母親の又来(またらい)さんは「麻友先生は超一流。子どもたちによくしてくれますし、妥協しない厳しさもあります」と語ってくれた。

 

「先生は経験が豊富で、教え方がとてもカラフルです」

とは山下薫さんの言葉。自身の演奏力の客観的評価を知りたいと、薫さんはマユ先生のもとで試験対策を行い、順調にRCM試験(*RCM:The Royal Conservatoryは北米での大半の楽器演奏や理論習得の認定試験を行う機関)をパス。次は指導者レベルの試験を受験予定だ。

 ベートーベンの『悲愴』のレッスン中、レガートで8部音符が連なる部分で、運指が走りがちになった。すると先生はスタッカートで弾くことを提案。シングル、ダブルとスタッカートで弾いた後、レガートに戻ると見事にアジャストされた。「スタッカートはレガートよりも一つ上の技術。それができるとレガートも上手に弾けるんです」とのこと。次に3回似たメロディの続く箇所が平板な印象だと受け止めた先生。「これは自分の耳が聞こえないとベートーベンが気付いた時に作った曲。なぜなんだ、なぜ聞こえないんだ、なぜ自分なんだと、ダメ押しが続くんじゃないでしょうか」。薫さんも同感。その思いを持ってもう1度。先生は全身で指揮するように応援。すると伝わってくるものが格段に変化した。ただ弾くことと、表現することには大きな隔たりがあるものだ。

 

レッスンを見学してー

 マユ先生から曲の魅力を聞くと、皆、その味わいを表現したい気持ちがかき立てられるようだ。でも時にぶつかる技術面の壁がある。指がうまく動かない、音の粒が揃わない等々ムムそんなとき、先生は原因を即座に見て取り、適切な練習法を提示する。なかには一見関係のなさそうな手の動きを練習させることも。そして課題がクリアされていく様子は見ていて気持ちのいいものだった。

 

ー子どもにも曲の本質を捉えさせる指導の姿が印象的でした。指摘の仕方も丁寧ですね。

 年齢によって語ることを制限せずに、技術面も曲想の面でも踏み込んだことを理解してもらえるまで伝えるようにしています。指摘については、結果を先に言わずに考えてもらったり、こちらからは提案に努めるようにしていますね。

 

ー音楽療法を主にしたレッスンも行っているそうですね。

 認知症を患う90歳の奥様に歌などで記憶を呼び戻すことから始め、そのうちピアノで簡単なものを弾き始めたのですが、いつも奥様が目でご主人のことを追ってらっしゃるんですね。それで、ご主人と並んで座って『むすんでひらいて』を一緒に弾いてもらったんです。すると、演奏できたときに普段は表情の硬い奥様がにっこり笑っていらしてノ!そしてご主人が「ようできたな、ようできたな」って。そんな幸せな気持ちが生まれることは私の望みそのものです。先ほどの薫さんも「弾きながら癒されています」って言われていて。そんな姿がうれしいですね。

 

「どんな人にも平等に与えられている音楽。それをみんなに味わってもらいたい」ーマユ先生はそんな願いを原動力にひとり一人に合わせたレッスンを展開中だ。

 

左手でリズムを取り、口で歌ってメロディを弾くなど多彩な方法で技術を高め、めきめき上達中の又来志乃ちゃん

 

指導を受ける志乃ちゃんの妹・沙代ちゃん(4歳)。発表会には親子3人で連弾を披露した

 

出勤前のレッスンで「先生は伝え方がツボにはまるような表現でとてもわかりやすいです」と山下薫さん

 

(文責 平野香利)

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