六代桂文枝 初のバンクーバー公演

 6月13日、バーナビー市の日系文化センター・博物館で、「六代桂文枝バンクーバー公演」が開催された。長年、『桂三枝』の名で親しまれてきたが、2012年7月に『六代桂文枝』を襲名。バンクーバー在住の人にとっては『文枝師匠』の高座は、初めてという人がほとんどで、期待感もひとしお。日系センターの中で最も広いスペースが満席。約500人の人が口々に「涙が出るほど笑ったのは、久しぶり!」と、大満足の夏の夕べであった。

 

中入りあとの桂文枝の公演「優しい言葉(文枝作)」

 

創作落語300作に向けて

 庶民の暮らしの中の「クスッ」と笑える一場面や、「キュン」とくる人情話を巧みに捉え、編み込んだ創作落語は、現在252作にもなり、さらに、「300作まで目指したい」と文枝師匠の創作意欲は収まらない。これらの作品は、本人はもちろん、弟子や、若手の落語家にもチャンスを与え、上演されている。

 落語は、約400年の歴史があり、その時代時代に創作され、また、それぞれの落語家がその時代に合うように変えながら、古典として受け継いできた日本の伝統芸能。現代に生まれた創作落語も、やがては古典となってゆく。そんな作品群が、やがて300作にもなろうとしている。

 この日は、桂三輝(サンシャイン)による英語落語の「生まれ変わり」、桂三語(さんご)「青い瞳をした会長さん」を上演。バンクーバーという土地柄にぴったりの演目が選ばれていた。桂文枝師匠の演目は、「宿題」と「優しい言葉」。いずれにも枕の部分にバンクーバーへ到着しての印象を巧みに取り入れ、客席との距離を縮め、腹をよじらんばかりの笑いを誘っていた。

この日を待ち焦がれ 開演前から長蛇の列

 暮らしの中に笑いは不可欠とは言うものの、この地に、日系人が心から笑えるような専門の寄席や演劇場は、当然のことながらない。そんな背景もあり、六代桂文枝バンクーバー公演実行委員会、日系女性起業家協会(JWBA)、日加商工会議所、懇話会、木曜会、建友会、企友会、桜楓会も積極協力。日加タイムス、ふれいざー、月報も広報協力。弊社もメディアスポンサーとして参加。早くから話題となっていて、はじめに予定していた席数を大幅に増やすことになったという。  こうした『笑いの機会』が、今後ますます増えることが期待される。

 

桂文枝プロフィール

昭和18年7月16日生まれ、大阪府出身。血液型O型。 昭和42年、ラジオの深夜番組に出演し、若者に圧倒的な支持を得る。昭和44年にテレビの司会に抜擢されてから、数々のレギュラー番組を担当する。昭和56年、 「創作落語」を定期的に発表するグループ・落語現在派を旗揚げし、現在までに 250作以上の作品を発表。2度の文化庁芸術祭大賞、芸術選奨文部科学大臣賞などを受賞し、平成18年秋には紫綬褒章を受章した。また平成15年上方落語協会会長に就任。上方落語の定席「天満天神繁昌亭」建設に尽力。大阪の文化振興に貢献したことにより大阪文化賞特別賞を、平成19年には菊池寛賞を受賞し、秋の園遊会に招待された。平成24年7月16日、六代桂文枝を襲名。今春、旭日小綬章を受章した。 現在、国内外で落語会や講演会を開催するかたわら、落語家やタレントの育成に励み、また、大学で特別講義を担当するなど、教育・文化活動にも力を注いでいる。

 

当日は約500人の観覧者があった。開場前から長蛇の列ができた

満席になった会場

六代桂文枝の公演「宿題(三枝作)」

前座後半を務めた桂三語(さんご)の公演「青い瞳をした会長さん(三枝作)」

前座を務めた桂三輝(サンシャイン)の公演「生まれ変わり(三枝作)」

(取材 笹川守 / 写真提供 斉藤光一)

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