カナダ 対 日本
日本惜敗。錦織がラオニッチとの激戦を制し2勝目をあげたが、第5試合までもつれた対戦は、カナダが制した。ポスピシルのサーブが決まった瞬間、会場は大歓声に包まれ、カナダの勝利が確定した。 1日目第2試合と3日目第1試合で戦った錦織圭は、両試合に勝利し、チームに大きく貢献した。しかし、総合力で勝るカナダが他の3試合で勝利。日本は2勝3敗で、デビス杯1回戦敗退が決まった。
第3セットで自らのゲームをキープし、ガッツポーズをして雄叫びをあげる錦織。3月6日第2試合(撮影 古川透)
大会は、3月6日から8日まで、ブリティッシュコロンビア大学ダグ・ミッチェル・サンダーバード・スポーツセンターで開催された。1日目はシングルス2試合、2日目はダブルス1試合、3日目はシングルス2試合。1日目は一方のチームの1番手と相手の2番手が対戦、3日目は第1試合に両チームの1番手が対戦し、それでも勝負がつかない場合は第2試合で2番手が対戦する。3勝したチームが勝ち上がる。
錦織2勝 強さ見せつける
錦織の強さが際立った。そんな大会だった。1勝目のポスピシル戦は、第2セットでタイブレイクまでもつれたものの、そこを切り抜けると危なげなく勝利した。途中、カナダ側の応援にサーブのタイミングを狂わされ、イラッとする様子も見せたが、試合後は、「デビス杯は伝統のテニスのマナーがほとんどないので、やりにくいと言えばやりにくいし、アウエーで、サーブの打つタイミングだったり、難しかったりしますけど、デビス杯なのでそれも踏まえ集中してやれてます」と冷静に対応した。
そして注目の3日目第1試合。ここで負けると日本が敗退するというプレッシャーの中で、ライバルのラオニッチに激戦の末、勝利した。
特に第5セットは、ブレイクしたものの、ブレイクバックされ、精神的に追い詰められたという。3―3に追いつかれメンタル的には一番大変な場面だった、何回か気持ちが切れそうになったと振り返った。「アウエーでの応援だったり、雰囲気だったりに、流されそうなところをしっかり耐えて、気持ちを強く持っていけたのが一番のカギでした」。太鼓やラッパが鳴る応援は正直騒がしい。それを耐えられる強靭な精神力が勝利を導いたのだろう。
対戦したラオニッチは、「(彼との試合は)いつも厳しい戦いになる。試合の中で、流れも行ったり来たりするし、そんな中で必死に戦っている」と錦織との対戦を言い表した。この日の対戦で自分が選択したプレーの全ては正しかったと思っているとも語り、敗因について詳しくは語らなかった。
「彼との試合はいつも長い試合になる」と錦織。簡単に勝てた試合がないと何度も語り、サーブは世界トップクラスだし、最近は尊敬できるところもあると思っているが、「好きな対戦相手でない」と笑って応えた。
デビス杯の魅力
テニスは個人スポーツだ。国を代表するオリンピックでさえ、シングルスとダブルスしかない。その個人スポーツを団体戦として楽しめるのがデビス杯だ。シングルス4試合、ダブルス1試合で、3勝した方が勝ち。ここだけ見れば、個人戦の域を出ないが、4人の力を合わせれば、掛け算になる。それがデビス杯の醍醐味だ。だからこそ応援する側も力が入る。今回のカナダ対日本も、そんな醍醐味を存分に味わえる大会だった。
数字上では日本が健闘したように見えるが、実際は互角の戦いだった。特にダブルスは、ランキングをみれば、カナダ絶対有利に見えた。しかし、試合は第5セットまでもつれた。第8ゲームでブレイクされ、涙をのんだが、どちらに転んでもおかしくなかった。「すごく悔しい」。添田、内山、両選手が見せた悔しそうな表情が全てを物語っていた。
今大会を振り返って、カナダのマーティン・ローレンドー監督は、「ランキングを見る限りでは、誰もがカナダが勝つだろうと予想していただろう。でも、ランキングはほとんど関係ない。カナダの勝因は選手層が少し厚かったこと、ホームで試合ができたこと、この二つが掛け合わさっただけだった」と語った。
デビス杯のもう一つの魅力は、国別対抗団体戦が選手にとって特別な意味があることだ。昨年優勝したスイスは、フェデラーとワウリンカのダブルスという夢のようなペアが実現した。一人ではなく4人で国を代表することに特別の思いがあるようだ。
錦織は、デビス杯ベスト4が目標だと語った。組み合わせや試合会場など運も必要とするが、実現可能な目標だという。「デ杯は正直、プレッシャーもかかるし、他の試合より大変だけど」と言いながらも、経験して得られるものが多く「出られる時はしっかり出たい」、そういう大会に位置づけていた。
カナダの目標は優勝だ。ポスピシルは3日間全てに出場した。それでも集中力はきれなかったという。毎回、フル出場する彼にとってもこの大会は特別だ。ラオニッチ、ネスターと一緒なら「何が起きても不思議ではない」と満面の笑みで語った。組み合わせも、ホーム試合も、今年は運がいい。2013年は準決勝まで進んだ。実力のあるメンバーが揃う今年、十分に優勝を狙える位置にいる。
日本チームのトップバッター伊藤。コートへの順応性を考えて植田監督から第1試合に指名された。3月6日第1試合ラオニッチ戦(Photo by Sam Maruyama)
ダブルスの試合を、ベンチから声を出して応援する錦織。3月7日ダブルス(撮影 古川透)
ベンチから応援しながらガッツポーズをする錦織(中央)。 3月7日ダブルス(撮影 古川透)
ダブルスのベテラン選手ネスター(手前)とポスピシル。3月7日ダブルス(撮影 古川透)
息の合った試合をする内山(右)と添田。3月7日ダブルス(撮影 古川透)
フォアハンドで攻める錦織。3月6日第2試合(撮影 古川透)
両手バックハンドで攻める錦織。3月9日第1試合(撮影 古川透)
5セット目を制し、勝利の瞬間にガッツポーズをする 錦織。3月9日第1試合(撮影 古川透)
球に飛びつく錦織。 3月9日第1試合(撮影 古川透)
内山(手前)と添田。3月7日ダブルス(撮影 古川透)
試合中、作戦を話し合うポスピシル(右)とネスター。3月7日ダブルス(撮影 古川透)
ラオニッチの高速サーブ。この日は最高230キロを記録した。3月8日第1試合錦織戦(Photo by Sam Maruyama)
両手バックハンドで攻めるラオニッチ。3月9日第1試合(撮影 古川透)
試合後、観客の声援に手をあげて応えるラオニッチ。3月8日第1試合終了後(Photo by Sam Maruyama)
カナダの勝利が決まった後、チームメートに肩車され、ファンに手を上げるポスピシル。バンクーバー出身の彼にとって地元での勝利は格別と喜んだ。3月8日第2試合終了後(Photo by Sam Maruyama)
カナダの勝利を喜ぶカナダチーム。会場は大歓声に包まれた。3月8日第2試合終了後(Photo by Sam Maruyama)
(取材 三島直美)