リスター千津江さん

 

バンクーバーから少し離れた小さな町ホワイトロックでカフェを経営し、日々奮闘しながら頑張る日本人の方に取材をした。日本から離れた地で生活する上での周りの環境や苦難など、様々な興味深い話を聞くことができた。

 

リスター千津江さんと朝食

 

当時を振り返って今を見つめる

 アメリカの国境近くに位置するホワイトロックという町でカフェを営むリスター千津江さんは、カナダに1996年11月に初めて来た。国際結婚を経て現在はカナダ永住権を持っているが、様々な苦難を乗り越えてきた。

 日本では食品卸の仕事に携わり、移住を機にホワイトロックのレストランでウェートレスを始めた。ウェートレスの仕事に魅了され、「一生ウェートレスとして働きたい」と考えた矢先、職場が急に閉店してしまう。町中全てのレストランに履歴書を持ち込むが、履歴書を見せる暇もなく店主に「出ていけ!」と言われる事も度々あった。しかしこの経験を通して、「だったら雇われる側ではなく、雇う側になってやる」と決心するきっかけになったそうだ。お店を始める為の資金は銀行から借り、資金の目途が付いた所で以前から目を付けていたカフェの購入を考えていたが、タイミングが合わずに購入には至らなかった。だが、その後すぐに現在のカフェが売りに出ており購入するに至った。

 購入したカフェは、30年もの歴史があり彼女が5代目のオーナーとなった。もともとは、ホワイトロックで初のラーメン店を考えていたが、初期投資できる資金も少なく、カフェの軌道が上手く乗ってから改装しようと考えていたようだ。現在、お店を初めて11年が経ち、8割が常連のお客さんでな毎週欠かさず来てくれるまでになった。しかし、ここまでの道のりは厳しかった。最初の2年は、昔からの常連さんが僅かながら来てくれたが、全体的な客足と売り上げが伸びず毎日支払いに追われる悪夢を見た。さらに、ホワイトロックは高齢者が多く住民に受け入れてもらうのが一苦労だったようだ。例えば、壁の色を変えようとするとお客さんに「少しでも何かを変えたらもう二度と来ない」と言われ、さらに「少しでもメニューを変えたらもう来ない」など意見は厳しいものばかりであった。それからは、出来る限り前のオーナーの味を再現する事、店内を変えない事に注力したそうだ。2年が経った頃から段々と地域に認められ客足が増えた。少しずつ彼女オリジナルのメニューに変化させ、今では半分程のメニューがオリジナルから変わっている。

 お客さん中心にお店作りを考え、サービスもそれに合わせ多様化している。メニューに存在しない物も注文が入ればできる限り作り、常連にはメニューを見る事なく個々に合わせて必要な物を出せる用意をしているそうだ。こうした居心地の良さが多くの人引きつけて離さない大きな要因になっているのだろう。

 彼女は、今の仕事が「自分にとっての天職」と自信たっぷりに語ってくれた。世界でも好きな事を仕事にできる人は、2%と極僅かであると言う事を聞いた事がある様でこうして自身の店で大好きな仕事ができる事に大きな幸せを感じているそうだ。

 また、カフェでの出会いは普通なら一生出会う事のできない人と出会える機会でもあるようだ。パイロット、市長、映画関係者、100歳を超える方など様々な人が訪れる。お客さんの話を聞くたびに、今まで自分の知らなかった世界を知る事は、彼女に多くの刺激と活力の原動力になっているようだ。

 千津江さんは、大の動物好きでもある。以前は、隣町のサレーにある動物保健所で13年間ボランティアのリーダを務めていた。また、東日本大震災の際に福島に取り残された動物たちの救助活動も率先して行った。福島原発から20km圏内に防護服を着て入り、取り残された動物たちの救助活動は、バンクーバーでも大きく報道された。現場には、鎖につながれたまま飼い主を待つ犬や牧場に取り残された豚や牛が餓死寸前だったそうだ。牛舎や豚舎にいる牛や豚は、柵を開けても目の前に草や水があっても怖くて外に出てくる事はなかったそうだ。予想以上の数の動物たちで持ち込んだ水や食料は一瞬にして底をついてしまった。この光景は、動物への罪悪感と後ろめたさを感じさせたそうだ。悲惨な状況を目の当たりにしたが、避難所で飼い主と再会する犬や猫の姿は彼女の励みになった。

 最後に「辛いことでも成長の過程だと思い、いつも乗り越えている」と語ってくれた。彼女の心に秘めた強い芯と明るい雰囲気が、多くの人をカフェに呼び込みまた行きたくなるのだなと感じた。

   

(取材 仲野琢杜)

 

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