-日系漁師記念碑の除幕式ならびに表彰、行われる-

ブリティッシュ・コロンビア州の日系漁師たちの功績を後世に伝える記念碑の除幕式が5月24日、行われた。会場となったリッチモンド市スティーブストンのジョージア湾缶詰工場博物館には約120人が集まり、漁師らの名前が刻まれた記念碑の除幕を祝った。 また日系漁師代表として村尾敏夫氏に対し、在バンクーバー日本国総領事岡田誠司氏から感謝状が送られた。

 

日系漁師レガシー・チャレンジについて説明するダン野村氏

 

日系漁師の歴史を後世に残すために

100年以上に及ぶBC州の日系移民の歴史の中で、日系漁師たちは大きな役割を果たしてきたと同時に、BC州の沿岸漁業の発展にも貢献してきた。  日系漁師の歴史的・文化的遺産の保全と啓蒙活動の一環として、日系プレース基金は昨年、募金プロジェクト『日系漁師レガシー・チャレンジ』を企画。集まった募金の一部は、日系漁師の歴史資料の保全に貢献しているジョージア湾缶詰工場博物館に寄付された。その記念として、今回の記念碑が同博物館に設置されることとなった。

 

缶詰工場博物館内で行われた除幕式には、予想を上回る120人が参列

 

日系漁師レガシー・チャレンジ

日系漁師は戦前から戦後まで、数々の困難に遭いながらも、高い技術とひたむきな態度で漁業に臨んできた。またその家族も、缶詰工場などの重要な労働力となっていた。  そんな彼らの功績を後世に残す活動を続けてきた日系プレース基金が、日系漁師にゆかりのある家族に対し、先祖の記録を残すための募金を呼びかけたのが『日系漁師レガシー・チャレンジ』だった。  式典で挨拶した募金プロジェクトのまとめ役、ダン野村氏は、426の個人や団体から、170人余の日系漁師を記念する寄付8万3千ドルが集まり、バーナビー市の日系博物館と、ジョージア湾缶詰工場博物館に寄贈されたことを報告。このプロジェクトに協力、成功に導いた多くの人に感謝するとともに、リッチモンド市議会議員ビル・マクナルティ氏からも多大な協力を得たことに触れ、同議員に感謝の言葉を述べた。

 

(左から)除幕された記念碑に見入る(左から)ジム小嶋氏、ジョージア湾缶詰工場博物館常任理事レベッカ・クラーク氏、水田治司氏、ジム田中氏

 

日系漁師の精神を語り継ぐ

式に参加していた、元漁師やプロジェクト関係者を壇上に招き、記念碑の除幕を行った。記念碑には「これは、ブリティッシュ・コロンビア州沿岸で漁業に従事していた、すべての日系漁師を記念する碑である。幾多の物理的、経済的、そして社会的困難に立ち向かった彼らの情熱、忍耐、不屈の精神は、後世に語り継がれていくことだろう。ここに刻まれた漁師と、その漁船の名は、ブリティッシュ・コロンビア州の漁業に多大な貢献をなした4千人余の日系漁師の一部である」と記され、レガシー・チャレンジ募金でゆかりの人から寄付のあった漁師の名前が刻まれていた。

 

表彰状を手にする村尾敏夫氏(中央)と、岡田誠司総領事(右)、ビル・マクナルティ氏議会議員(左)

 

日系コミュニティの歴史に多大な貢献

続いて、日系漁師が日本とカナダの相互理解と友好親善とに寄与したことに対する表彰状が、漁師を代表して村尾敏夫氏に授与された。スティーブストンの漁師として戦前、戦後を通して活躍したのみならず、地元の日系コミュニティにも積極的に貢献してきた同氏の経歴を、在バンクーバー日本国領事館副領事八田知美氏が紹介。在バンクーバー日本国総領事岡田誠司氏が表彰状を村尾氏に手渡した。  表彰を受けた感想を村尾氏に聞いたところ、「自分ひとりじゃ何もできなかった。仲間がいたからこそ、ここまで来れた。この表彰状は日系漁師みんなのものだね」と話してくれた。

 

表彰状を手にする村尾敏夫氏(右)と、岡田誠司総領事(左)

 

(取材 平野直樹)

 

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