落ち着いた店で安全でおいしいものを口にしたい—そんな 思いの人たちの訪れるお店が「茶話 ティー&クラフト」である。お茶の98%、ミールメニューの野菜、豆腐、そして手作り抹茶アイスの全材料がオーガニッ ク。店内の和風のインテリアや雑貨は故郷に戻ったような気分にさせてくれる。 食を通じて環境貢献に オーガニックとなると食材のコストはぐんと跳ね上がる。「うちは卸業者からのまとめ買いができない規模。コストの問題が一番の悩み」とオーナーの下前ル リ子さん。しかし食に安全を求める思いは人一倍強い。「子供が生まれるまでは、『自分までの世代だから』と食に対して関心なく生きていたのですが、思いが けず高齢で妊娠し、ただでさえハイリスクでしたから、『自分の健康は子供に直結する』と食生活を切り替えました。やはり自分の血のつながった世代を残すと なると、いい環境がほしいと考えるようになりますね」 茶話はオーガニック製品をコミュニティに広げようとする活動「グリーン・ゼブラ」の加盟店でもあ る。
お茶との出会いは染め物から 意外にもお店には、名前に冠したお茶よりもランチを食べに来るお客さんが多いそうだ。 「看板にランチを掲げているせいでもあるでしょうね。開店時にはお茶ブームが来ていたこともあって、お茶に焦点を当てましたが、営業してみると、まだま だお茶はマイナーだとわかりました」。スターバックスにお茶もあることだしと、最近ではオーガニックコーヒーも置き始めた。 そもそもルリ子さんとお茶との結びつきは、自身が手がけるアートの染め物から。出産を機に染色材料も素材も天然に替えたなか、お茶は下染めをするのに最 も適した材料だった。そんなアーティストのルリ子さんが食品ビジネスに飛び込んで3年が経った。「売る精神に乏しかったというのが学びですね。伸び悩んで いた原因はそこだと思います。待っていてはだめで、自分から積極的に語って売っていかないと」
ゆったり「和」の空間に人もアートも集まって そうしたルリ子さんの奮闘を支えているのは、元気はつらつとした志摩さん。「このお店に憧れて雇ってもらいました。お客さんに『いいね、落ち着くね』って言われると、『ギャラリーも見ていってくださいね!』って自慢気に言えるのがうれしいです」。
日本茶からルイボスティまでお茶のセレクションも豊富 アート作品は、口コミで出展者が続いており、センスのいいアートはお店の大きな魅力となっている。最近では、お茶席もできるようにと畳も購入。茶話の 「和」のやすらぎ空間は、アーティストの自己実現の場として、またワークショップ開催やコミュニティの集いの場としても活躍中だ。
(取材 平野香利、写真 小野晶)
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