2017年1月26日 第4号
「お正月は何を食べましたか」、「おもちは何個食べましたか」、こんな会話から年明けの授業はスタートする。日本のおせち料理やお雑煮などの正月の食文化を教えることも大事である。
ここでよくこんな質問を受ける。「何」の読み方である。日本人は別に気にしたこともないが、日本語学習者はとても気になる。「何」の読み方は「なに」か、それとも「なん」なのか。確かに「何を食べたか」の場合は「なに」であり、「何個」の場合は「なん」である。そんなこと、いちいち気にする必要はないが、でも生徒は二つあるので気になってしまう。
確かに、「何曜日がいいですか」の場合、「なにようび」も「なんようび」もどちらも使える。その違いなど考えたことはなく、「発音しやすい方でいいですよ」である。でも違いはある。お客様に「何曜日がよろしいでしょうか?」と、親しい友に「何曜日がいい?」と、確かに使い分けている。教わったことはないが、「なに」はフォーマルで、「なん」はくだけた感じがする。
さらに、この「何」の読み方は一筋縄ではいかない場合もあるので、日本語教師としてはとても大変。例えば「何県」である。「なにけん」とも「なんけん」とも両方読める。意味が同じであれば楽だが、読み方で意味が変わってしまうので厄介である。
でも我々日本人は文脈から容易に判断できるので、問題はない。例えば「出身は何県ですか」であれば「なにけん」と読んで、どこの県なのかの質問となり、「東北地方には何県ありますか」であれば「なんけん」と発音して、県がいくつあるかの質問だとすぐ分かる。「何人」も同じように「生徒は何人いますか」と「あの人は何人ですか」であるが、これも日本人は文脈から簡単に判断できる。しかし初級の生徒にはなかなか難しく、「何回」や「何個」のように「なん」は「いくつ」という数を質問するときによく使いますよ、と教えている。
しかし日本人でも分かりにくい表現がある。例えば「このボールペンは何色ですか」と書いてあると困ってしまう。「なにいろ」とも「なんしょく」とも読めるので、この文からでは質問の内容を判断するのは難しい。「なにいろ」と読めば、「黒です」と答えるし、「なんしょく」と読めば、「3色です」になる。日本語教師としては、この「何色ですか」の質問文に、難色を示したくなってしまう。
今年は酉年、良い年になるよう、願っトリますが、表題の「今年は何年...?」も、メールなどで見るとややこしい。コンピューターに「なにどし」と「なんねん」と入力しても、どっちも「何年」という漢字に変換される。人に、特に女性に年齢を尋ねるのは失礼だが、「干支」ぐらいはいいだろうと、Eメールに「何年(なにどし)生まれですか」と書いたところ、相手が「何年(なんねん)生まれですか」と読んでしまったら、大変なことになってしまう。この場合は「なに年生まれですか」と「ひらがな」で書いたほうが無難である。
本年もよろしくお願いいたします
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