2016年12月22日 第52号
先月1ヵ月ほど日本に里帰りしました。2年ぶりでしたが、かなり久しぶりの感じがし、懐かしい日本を大いに満喫しました。そして台湾にも新渡戸稲造を追い求めて足を延ばし、とても有意義な旅でした。
日本にいる教師養成講座の卒業生達と何回か同窓会なども行い、また日本で就職しているカナダで教えた日本語上級者とも会って、楽しいひと時を過ごし、教師冥利に尽きる思いでした。場所は息子が店を出している川崎の「居酒屋」です。
そして早速日本語講座を始めた。先ずは「里帰り」である。本来この「里帰り」は新婦が結婚後、初めて実家に帰ることであった。でも今では意味が広がり、妻が子供と里帰りするなどにも使うようになったが、やはり男には使えないとされている。
でも海外に移住している人は日本に「行く」か「帰る」か、どういえばいいか、なかなかややこしい。そこでこの「里帰り」の意味がさらに広がって、海外移住者などは男女関係なく使える便利な表現となった。言葉は時代とともに変わる一つの例である。
また前月号で書いた「銀ブラ」も話題にした。そして銀座8丁目に今でもある喫茶店「パウリスタ」を訪れ、「銀ブラ」を経験した。そしてコーヒーを飲みながら店の人といろいろ話をして、確かに「銀ブラ」の語源は慶応ボーイが作った「銀座でブラジルコーヒーを飲む」からきていると強く感じた。
さらに、友人のお袋さん(80歳)にお会いしたとき、「銀ブラ」の話を持ち出したら、彼女からこんな話を聞いた。彼女の父親は1909年生まれで、慶応ボーイ。彼女も慶応卒だが、学生時代、よくお父さんから「銀ブラ行くよ」と言われたとのこと。その当時はすでに「銀座ぶらつく」の意味が主流になっていたと思われるが、まだ「喫茶店でブラジルコーヒーを飲む」意味も残っていたのであろう。慶応ボーイは「銀ブラ行く」という表現を使っていたようで、興味深い。
こんな話をしていたら、日本語上級者から思わぬ質問を受けた。「店」と「屋」の違い、である。確かに「喫茶店」はいいが、「喫茶屋」とは言わない。逆に「うどん屋」や「パン屋」はいいが、「うどん店」や「パン店」は馴染めない。確かに「店」と「屋」にはかなりの違いがあるようだが、我々日本人はそんなこと考えたこともない。でもちょっと気になった。
「書店」と「本屋」を比較すると、確かに違いを感じる。「店」のほうはよそ行きの感じがするし、「屋」は親しみを感じる。「本屋」は駅前のなじみの本屋であり、「書店」は大きな「○○書店」を想像してしまう。こんなこと教わった記憶はないが、やはり母語として生まれながらに身についているのであろう。「酒店」よりは「酒屋」のほうがしっくりする。だから「居酒店」でなく「居酒屋」なのであろう。母語の感覚のすばらしさを感じた次第であります。
来年はとり年、酉は喧嘩ばかりしている申と戌の間に入って仲裁役をしたとのこと。来年もいろいろな問題をうまく仲裁してもらいたいですね。
よいお年をお迎えください。
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