2019年3月14日 第11号

 沖縄へ行ったのは、かれこれ50年も前のことである。それは、入学した高校の当時の担任の先生が沖縄旅行に行かれたスライド写真と、そのお話を聞いたことに端を発していたと思う。

 当時、沖縄は日本ではあるけれど、米国の政権下にあり、パスポートに似た身分証明書なる渡航許可書を貰わないと、琉球王国である沖縄に入国できないという具合であった。

 それならば(言葉が通じるならば)、中学生の時に読んだ小田実の世界一周の旅行記『何でも見てやろう』のような旅ができるかもしれないと思いたち、まずは沖縄で自分をためし、それから小田実のように世界一周の旅がしたいものだと、小さな夢を膨らまして、新聞配達、牛乳配達のアルバイトをして、わずかばかりの旅費を貯め、足りない部分は、父からの財政援助を受けての沖縄への旅立ちであった。

 時は1968年春、沖縄の本土復帰のニュースが話題になる頃であった。それは、北ベトナムの空爆をした黒い色の爆撃機が、沖縄の嘉手納飛行場を利用していたからではあるまいか? 当時聞いた話では、ベトナム爆撃の後、B29爆撃機はこの嘉手納飛行場に寄り、補給などをしていたとか。嘉手納米軍基地に多くの米軍機B29が駐機しているのを僕自身の目で見ることができたのは、船の中で知り合った龍谷大学生の青年の姉さんが米国人と結婚をしていて、嘉手納飛行場の米軍居住区に住んでいたので、わざわざ嘉手納にいるその友を訪ねたのがきっかけであった。

 「沖縄の返還無くして、日本の戦後はない」などと自分なりに思ったのも、この頃のことである。そのことなど沖縄の印象を地元紙に投稿したけれど掲載はなかったが、当時の佐藤栄作総理大臣も後に、同じように思える発言があるのは、今、沖縄旅行を思い返せば、おもしろく貴重な体験であったように思える。

 僕を乗せた関西汽船が大阪の港を出港したのは、1968年4月初めのことである。船はゆっくりと瀬戸内海を走り、豊後水道を南下して夕食になり、その後太平洋にでる。ここまでは、終戦前に沖縄へ片道の燃料で特攻作戦を敢行した日本のシンボルとも言うべき戦艦大和と同じ航跡であるけれど、その後、大和は進路を西に向けて航海をしているのは、敵潜水艦の追尾をかわすための偽装作戦でもあったのかもしれなが、流れが早い黒潮に逆らって南へ行くのには、それだけ余分な燃料を消費するから、黒潮の流れから外れるためであったのかもしれない。

 外は暗闇の海上、船の波しぶきの中にきらきら光るもの(くらげか?)、海ホタルが見えるのは印象的であった。船内放送があり、終戦間近にこの海で海の藻屑と散った戦艦大和の乗組員の慰霊式のアナウンスがあり、その当時の関係者か遺族が船の先で黙祷が捧げ、花が海に投げられた。このことが、僕と戦艦大和の最初の出合いの出来事であった。

 世界最大の46センチ砲を9門を備えていた、当時世界でも第一級の戦艦大和は、特攻の天一号作戦で、米軍艦載機の空からの猛攻撃に苦しむ沖縄を助けるべく、決死の覚悟での出港であったが、坊の岬での猛烈な攻撃を受けて撃沈されたのは、4月7日、昼過ぎ午後2時23分のことである。戦死者2740名、生存者は269名であったという。

 小生の知人でスティーブストン育ちで、当時日本海軍の駆逐艦に乗船していたというゲンジさんの話によれば、このバンクーバーにも戦艦大和の生存者がいて、昔、ヘイスティングストリートで、お店を出されていたとかという話である。戦艦大和にはアメリカ出身の日系通信兵がいたという話もある。

 元は同根の同じ豆なのに鍋で煮るとクツクツと泣くという意味の漢詩がある。今の北朝鮮と韓国も含め、悲惨な戦争は繰り返してはならない。

 「豆を煮る 豆の豆殻を燃く 豆は釜の中にあり泣く 本是同根より生ずるを 相煎るなんぞはなはだ急なる」 

 


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