2017年4月13日 第15号

 昨年9月にバンクーバーで上野千鶴子さんの講演があった。

 もう20年ほど前の話だが、彼女がひと夏UBCへ教えにいらした。その時、彼女の住まいが私の事務所の上階だった。多分、今は亡きUBCの教授鶴田先生か家主の桐島洋子さんのご紹介か記憶にないが、とにかく彼女にお会いでき、「社会学とは物事を上下左右あらゆる角度から見て研究する学問よ」と教えられたことは忘れられない。そう教えられても、話を聴いても、何もわからず、ぼっーとしていた私だったのだが…。

 今回の彼女の来加と講演ニュースはうれしくて、懐かしくてたまらなかった。むろん、講演にも映画会にも参加した。そして、彼女にご挨拶したが、上野さんは私を見ながら申し訳なさそう、覚えていなかった。でも話は通じてうれしかった。

 その昔、UBCの仕事を終え、帰国間もなく学問嫌いで社会学の本なんてとても読めないこの老婆用に、彼女は1冊の本を送って下さった。それは「Frida Kahlo」のような絵と上野千鶴子さんの詩が書いてある本だった。それを読んでいると、自分の心をじぃーとのぞき込まれ、心底にある秘密をグーッとつかみ取り、「絵」と「詩」にされたようであり、また、その本を手にした時の自分の気分で見方が変わる不思議な本だ。そのカバーに「To Sumiko with love, Chizuko」と書いて下さっている。それは大切な老婆の本なのだ。そぅーしてだ。約一ケ月ほど前に、また本を送って下さった。それは「おひとりさまの最期」という。すぐに御礼状をと思ったが「本を読んでから」と決心、そして読み始めた。これって、この老婆のために書かれた本だ!と思うほど、この78歳の「おひりさま老女」に適している。それは無論、世間一般のあらゆる「おひとりさま」の悩み、苦しみ、喜びの全てを、たくさんの調査をもとに、よーく書いたものだ。うれしいのは、そこにたくさんのユーモアがあり、声を立てて老婆は一人で大笑い。うーんと感じ入ったりしながら読んでいる。残り後20ページくらい。私のような老女が読んで、こんなに楽しい、また「残りの人生」をどう生き、最期にどう向かい合うかなど、この本と一緒に考え、学んでいる。本当に素晴らしい本だ。「よーくぞ書いて下さった」と感謝するのは、この老婆だけでないだろう。表紙の裏に、今度は「For Sumiko-san, with affection Chizuko Ueno 2016, 10, 27」と書いて下さっている。上野さん、ありがとう!

許 澄子

 

 

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