2016年12月22日 第52号
数日前、一人でコスコへ行って、色々と買い物をした。買い物の最後にボトルの水を一箱買おうと思った。山のように積んであるボトルの箱の横にカートを止め、ボトル箱を持ち上げるが、力不足で高く持ち上げられない、やっと持ち上げてもカートが動いて乗せられない。ところが、何回目かにカートが動かず、すっと乗せられた。ああよかった!立ち上がった時、一人の少年がカートを押さえてくれていたのだと分かった。ありがとう。
昨日久しぶりに、ある本の勉強会に出席した。数人の仲間たちの、毛染めをやめて白髪になった、何だか違った美しさ。4、5人の白髪女性が集まった。皆が揃って「カナダラインに乗るとね、すぐに席を譲ってもらえるの、何所でも親切にドアーを開けてもらえるの」と、毛染めをやめた時の白髪効果を話しあった。
数年前、ロンドンへ一人で行った。初めての場所ではないが、一人で行くのは初めてだ。色々調べていると、地下鉄などでは荷物を誰でも気軽に手伝って持ってくれると書いてあった。でも、老婆は持ちやすいように荷物を2個に分けて持ち旅に出た。ヒースロー空港から地下鉄に乗って街に出る。街に出て乗り換える時、階段を幾つも登り下りする。本当だ!若い人が女性でも男性でも本当に気軽に荷物を持ってくれた。あれー、これって信じられない!
ユーロエクスプレスの、一日特別料金を使ってロンドンからパリへ日帰り旅行をした。ロンドンから列車に乗ると、隣席で若い男性が日本語の本を読んでいた。日本語で一言あいさつした。一言あいさつが返って来た。その後2時間少々、一言も会話はなかった。通路の向こう側には新婚さんがいた。やはり日本語で話しているから日本人。無論、挨拶も会釈もない。やがて終点のノースパリに到着。プラットホームで新婚さんが写真を撮影中なので、私がシャッターを切って2人の写真を写してあげた。ありがとうと、一言いわれた。でも笑顔がない。迷惑だったのかなぁ?
その後、地下鉄を乗り継いでルーブル美術館に行った。途中で迷子になって、フランス人らしきお婆さんに行き方を聞いた。英語は分からない人だが、私がルーブルへ行きたがっていることが解ると、親切に自分について来いと言う。黙ってついていくとルーブルの地下に着いた。そこで、お別れしたが、完全に、彼女はこの老婆をわざわざルーブルまで連れてきてくれたのだ。
その昔、本当に大昔、50年以上前のことだ。まだ香港で生活していた時、母は仕事で、私は引率という理由で2週間ほどパリに行ったことがあった。母は毎日仕事で出かけるから、私はやることがない。せっせと毎日ルーブル美術館に出かけていた。あの時、初めて手で触れるくらい近くでモナリザの絵を見て驚いたものだ。今回モナリザの絵は遠くかなたバリケードの向こう、オペラのステージの上にあるようだ。遠くから眺めるように飾られていた。その昔、地下鉄はルーブル美術館の地下までとおっていたのだろうか?地下はまるでショッピングモールのようで、スターバックスもあった。
そして、日帰り切符でまたロンドンへ戻る。列車に乗ると今朝の青年と新婚さんが同じ席にいる。再会だが今回も皆様と目でご挨拶だけ。遠いかなたで久しぶりに日本の人に会って嬉しいと思った自分が何だか不思議でならない。淋しい老婆。
許 澄子