2019年1月24日 第4号

 ある小学校の校長先生が髪の毛を真っ赤に染めた。その写真が、学校のツイッターやフェイスブックそして校内レターなどに、一斉に出回った。誰が一体この写真を広めているのだろう?それは、当の小学校だ。また校内レターに関しては、校長先生本人が送ったものである。髪の毛を真っ赤に染めて、自らそれを報告しているなんて、日本の基準でいうと、とんでもない小学校のとんでもない校長先生のように思うかもしれない。だけど実際のところは、閑静な住宅街にある、市内学校ランキングで上位に入るカトリック系の小学校である。また数カ月前には、別の小学校で、顔面にケーキを投げつけられた校長先生の写真が飛び回った。ケーキの投げつけを許されたのは、生徒数人と教師たち。代表選手に選ばれるには、競争率が高かったようだ。

 でもどうしてこんなに校長先生たちが、いじられているのだろうか?前者は、チャリティーイベントで学校が掲げる目標金額に達成した場合、校長先生が髪の毛を真っ赤に染めると宣言したのである。後者も小学校のイベントの一環で、校長先生の顔にパイを投げつけようという先生側らの提案が出て、許可されたようだ。

 日本で育った私にとって、校長先生というと「朝礼で一方的なスピーチを延々する人」というお堅いイメージしかない。校長先生が自ら、生徒や教師と一緒になってイベントに参加したり、自ら笑いの対象になったりすることはなかった。職員室に行っても、校長先生を見かけることはあまりなかったし、逆に校長室から出てきたら、一気に、職員室や教室の雰囲気が固まっていた。校長先生とは、距離のある遠い存在だった。

 でも子供たちの小学校の校長先生は違う。毎朝、ロビーで「おはよう」と生徒や保護者に挨拶をする。保護者がボランティアのお手伝いや用事で学校に行けば、自ら出迎えてくれる。子供たちの名前もだいたい覚えている。校長先生は、先生のアシスタントとして教室に入ったり、授業を妨害する問題児の面倒をみる。(昨年まで通っていた子供の小学校では問題児たちが、自ら校長室に行って、悩みを聞いてもらっていたようだ)校長室にしても、ガラス張りなので、外から部屋の様子は丸見えだし、もちろん、校長室から外の様子も丸見えである。だから校長先生は、いつも学校で何が起こっているか理解しているようだ。その名が指す通り、校長先生は、学校の長、リーダーなのである。生徒たち、先生たち、保護者たちにとって、身近な存在でなければならないという理念を実現しようと努めている姿が、しっかりとうかがえる。

 今、日本では、学校でのいじめ問題などが頻繁にニュースを賑わす。もちろんカナダでもいじめは存在する。でも、ふと思った。日本の学校も、校長先生を筆頭に、もうちょっとオープンな学校環境をつくったら、少しはそんな問題も軽減するのではないかと。

 


■小倉マコ プロフィール
カナダ在住ライター。新聞記者を始め、コミックエッセイ「姑は外国人」(角川書店)で原作も担当。 
ブログ: http://makoogura.blog.fc2.com 

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。