2016年12月22日 第52号

「人」としての能力を優先

 「言葉はただのツール」いわゆる「会話をするのに必要な道具」であって、英語を上手に話せる、話せないといった言語能力よりも、それを使う「人」としての能力が北米では重視されるように思う。日本人のように英語を外国語として操る話者に対しては、「完璧でなくて当然」が一般的な前提であるだろう。 たが、残念なことに、カナダに数カ月も住めば、この一般的ではない例外にあたる部類の人たちに出くわしてしまうこともある。「あなたの英語、何を言っているのかさっぱりわからない」「その発音はそうじゃなくてこうだよ!」「今、君、英語の文法間違えたね!」などと、なにかと不必要に相手の英語を批判しようとする人たちだ。なぜそんなにむきになって相手の英語についてコメントしたいのだろうか。決して褒めているわけでもなく、相手の英語の上達を願っているわけでもないだけに、言われている側としては向上心をくすぐられるどころか、逆にそんな言葉がグッサグサと胸に突き刺さり、英語を話すのが嫌になってしまうこともあるだろう。

 私は21歳の時にカナダに来たのだが、若くてナイーブな雰囲気がしっかりと体中から出ていたのだろう。頼んでもいないのにやたらと会話の途中で私の英語を直そうとする同僚もいたものだ。だがやはり一般的なカナダ人からみれば、それは滑稽な風景だったようだ。上司がその同僚に向かって「あなたはいつから英語の先生になったの?」と嫌味を言ったのを覚えている。

 英語を母国語としない人の英語について、なんやかんやとコメントするのは、間違っている。日本語にしても、同じことがいえるだろう。結局のところ、そこで自分の英語のミスを恥ずかしそうにしたり戸惑ったりすると、相手の思うツボになってしまう。だって相手はあなたを抑圧することで優位な地位を保とうとしているのだから。いわばコントロール関係ができあがってしまうのだ。

 これからカナダに来る人、そしてカナダに来たばかりの若者たちには、知ってもらいたい。英語は会話のツールであって、大切なのはそれを操る「人」としての能力であることを。

 

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■小倉マコ プロフィール
カナダ在住ライター。新聞記者を始め、コミックエッセイ「姑は外国人」(角川書店)で原作も担当。 
ブログ: http://makoogura.blog.fc2.com 

 

 

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