2017年10月19日 第42号

 特別な記念日という訳ではありませんが、「薬の時間ですよ」は今回で70回目の連載となります。これだけの回数を重ねても、一度も話題に取り上げられたことのない薬や疾患は実に多く、今回取り上げる高血圧症もその一つです。

 高血圧とは、心臓が送り出している血液が血管に加える圧力が高い状態のことで、英語でhigh blood pressureや、hypertensionと言います。収縮期血圧(Systolic blood pressure; SBP。心臓が血液を送り出すために収縮したときの大動脈の内圧)が140mmHg、拡張期血圧(Diastolic blood pressure; DBP。心臓が拡張して血液を心臓へためこむときの動脈の内圧)が 90mmHg 以上が高血圧と定義され、この基準はカナダと日本の学会で共通しています。大小の血管にダメージを与えることで有名な糖尿病の場合、収縮期血圧130mmHg、拡張期血圧80mmHgが高血圧治療の対象となります。

 血圧の高い状態が長く続くと、脳卒中(脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血)、心臓病(うっ血性心不全、冠状動脈硬化、心肥大、心筋梗塞、狭心症)、腎硬化症、腎不全、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症といった合併症が起こりやすくなります。

 薬に頼らずに血圧を下げる方法として、生活療法(ストレス削減、充分な睡眠、減酒、禁煙)、 運動療法(ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動)、食事療法(減塩やカロリー制限等)が挙げられます。このような非薬物療法をきちんと行っていても、高血圧が続く場合には、薬物療法を行います。医師は患者の年齢、性別、重症度、服用薬、合併症の有無などを総合的に考慮して、血圧を下げる薬を処方しますが、降圧薬は作用機序別に5つのグループに分けられます。1種類の薬で目標血圧まで低下しない場合、作用が異なる降圧薬を2種類または3種類と同時に服用することもあります。

 カルシウム拮抗薬(Calcium channel blockers) は、血管を拡げて血圧を下げる薬で、成分名amlodipine、felodipine、nifedieineがこれに相当します。主な副作用として、動悸、頭痛、ほてり感、浮腫、歯肉増生、便秘等があります。

 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(Angiotensin Receptor Blockers;ARBs)は、血圧を上昇させるアンジオテンシンⅡという物質の作用を抑えることで、血圧を低下させます。Candesartan、telmisartan、losartan、valsartan、eprosartan、irbesartan、valsartan、olmesartanがあり、めまいのような副作用が起こることは非常に稀です。

 アンジオテンシン変換酵素阻害薬(Angiotensin Converting Enzyme Inhibitors;ACEIs)は、アンジオテンシンⅡの産生を抑えることで、血圧を低下させます。成分名Ramipril、benazepril、captopril、cilazapril、enalapril、fosinopril、lisinopril、perindopril、quinapril、trandolaprilがあります。ユニークな副作用として、空咳があります。服用後1週間から数カ月で見られ、服用をやめると症状はなくなります。

 利尿薬(Diuretics)は、体内のナトリウムと水分を尿として排出し、体内の水分量を減らすことで血圧を低下させます。Hydrochlorothiazide、chlorthalidone、indapamide、furosemide、spironolactoneがこれに該当します。薬によっては、低ナトリウム血症、低カリウム血症などの電解質異常、耐糖能低下、高尿酸血症などの代謝系への影響がみられることがあります。

 β(ベータ)受容体遮断薬(Beta blockers)は、血管を拡げ、心拍出量を抑えることで血圧を下げます。Metoprolol、atenolol、propranolol、carvedilolがこれに該当し、副作用として脈拍数が減少することがあります。

 ここまで、高血圧治療薬のハイライトでした。10月生まれの私はいよいよ40代に突入しますが、子育てと締め切りに追われて血圧が上がらないように気をつけながら、今後もコラムを続けていきたいと思います。

 


佐藤厚

新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。
2008年よりLondon Drugs (Gibsons)勤務。
2014年、旅行医学の国際認定(CTH)を取得し、現在薬局内でトラベルクリニックを担当。
2016年、認定糖尿病指導士(CDE)。

 

 

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