2018年9月27日 第39号
先日、半年毎の歯科検診に行ってきました。いつも通り、歯科衛生士による歯のクリーニングのあと、先生が歯をひと通りチェックします。前回レントゲンを撮ったので、今回は撮りません。何か気になることがないか尋ねられますが、熱いものや冷たいものがしみるのは、以前から。歯茎が後退してきているのは年のせい。でも、歯はよく磨けていて、 今のところ、歯周病の心配はありません。
さて、歯周病は一言でいうと、「細菌の感染が引き起こす、歯の周りの炎症性疾患」です。朝起きた時、口の中が粘つく感じがしますが、これは、口の中の細菌によるものなのです。口の中には、およそ300種類から500種類の細菌が棲んでいるといわれています。普段は大人しくしていますが、歯磨きが十分にできていないときや、糖分を摂り過ぎたときなどに歯に付着した食物のかけらや糖分が、細菌の餌になります。餌の多い状態が続くと、口の中にネバネバした物質が作り出され、それが歯の表面に付着します。付着した状態が続くと、ネバネバした物質は、「歯垢(プラーク)」に変わります。「歯垢(プラーク)」は、粘着性が強く、軽くうがいをしただけでは落ちません。歯垢1mgの中には、10億個もの細菌が棲んでいるといわれており、これが歯周病や虫歯の原因になります。
歯周病は、口の中の健康だけでなく、その先にある様々な臓器の健康にも影響を及ぼします。感染性心内膜炎、脳や肺の膿瘍、糖尿病、肺炎、腎臓病などの引き金になることがすでに明らかになっています。しかも、その病気が、命に関わる病気であることが多く、歯周病は、万病の元と考えられています。
先日、この歯周病について、英国の総合学術誌「ネイチャー」の電子版に、認知症を発症させたり、その症状を悪化させる仕組みを解明した研究成果が発表されました。国立長寿医療研究センターや、名古屋大学などのグループが行った研究で、歯周病菌の毒素が、アルツハイマー型認知症の原因とされる脳の「ゴミ」を増やし、認知症を悪化させることを証明し、認知症と歯周病の関係を解明するために、歯周病に感染させたマウスを使った実験が行われました。
βアミロイドの蓄積までの経路は、まず、歯周病にかかると、「エンドトキシン」という毒素が発生し、この毒素が、血流によって全身に巡ります。やがて「エンドトキシン」は脳にも到達し、「サイトカイン」などの炎症性物質が増加します。この「サイトカイン」が、「βアミロイド」の産生を増やします。「βアミロイド」が脳に蓄積すると、認知症の発症が早まったり、進行が促進したりします。
認知症の約6割を占めるとされている、アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞の中に「βアミロイド」という蛋白質の「ゴミ」が蓄積し、神経細胞が徐々に死滅していくことが原因と考えられています。マウスを使ったこの実験では、歯周病にかかると、アルツハイマー型認知症の原因とされている、「βアミロイド」が脳内で増え、蓄積することがわかり、「歯周病とアルツハイマー型認知症は関係がある」ことが証明されました。
歯周病は万病の元。歯周病を口の中だけのことと侮らず、認知症だけでなく、その他の病気を防ぐためにも 、日々の口腔ケアに努めましょう。
ガーリック康子 プロフィール
本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定