2018年3月29日 第13号
今年も確定申告の時期がやってきました。すでに申告を終えた方もいらっしゃるでしょう。在宅で介護をしている方、「医療費控除」や「障害者控除」も申告されましたか?
認知症が進み、介護の度合いが増すほど、かさんでいく介護費用。介護を受ける人の年金だけでは費用が払いきれなくなれば、 介護者の持ち出しが発生します。また、介護のために、介護者が止む無く仕事を辞めてしまった場合、収入は激減し、預金を切り崩して生活費に充てるしかなくなることも考えられます。介護をするために離職しても、生活できなくなれば、 仕事を辞めた意味がありません。介護に関わる金銭的な負担を少しでも軽くするために、介護費用の控除を申告し、生活の困窮化を防ぐことも考える必要があります。
認知症の介護を含め、介護費用の一部は、「医療費控除」の対象となり、扶養しているかどうかに関わらず、生計を同じにする親族が控除の対象となります。配偶者や子供、別居をしている親族でも、生計を同じにしていれば、医療費を合算することができます。ただし、「医療費控除」の対象になるものは、「治療に必要なもの」に限られます。例えば、入院費、治療費、薬代、医師が必要と認めた補助機器(つえ、補聴器、眼鏡など)の購入費、市販薬、公共交通機関を使っての通院費がそれに当たります。介護サービスでは、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ(医療機関でのデイサービス)、短期入所療養介護(ショートステイ)も控除の対象となります。介護を受ける人がおむつを使用している場合、施設に入所している場合でも、その費用が控除の対象になります。ただし、入院中の身の回り品の購入費や、健康増進のためのビタミン剤の購入費、通院のための自家用車の燃料費など、治療・療養目的に直接関係ないものは、対象となりません。
また、介護を受ける人が障害者と認められている場合、「障害者控除」も申告できます。認知症の場合、「何らかの精神疾患があり、長期にわたって日常生活または社会生活への制約があること」という要件を満たせば、 症状の程度によるものの、「精神障害者」の認定が受けられることもあります。認定により受けられるサービスのうち、公共機関の利用料金の割引や減免、一部の税金(所得税、住民税、相続税)の控除などは、特に高齢の認知症の人を介護している家庭では、大いに家計の助けになるでしょう。
このように、日本の場合、介護にかかる費用は、「医療費控除」や「障害者控除」を通して控除され、独立した「介護者控除」はありません。しかし、カナダでは、「医療費控除」や「障害者控除」の他に、介護をする人を中心に考えた「介護者控除」(Canada Caregiver Credit)があります。身体的、精神的な障害のある配偶者または事実婚のパートナーや、自分や相手の三親等までの親族を介護している場合に当てはまります。
Canada Caregiver Creditは、⑴Infirm Dependent Credit(身体的・精神的疾患のある18歳以上の扶養家族への控除)、⑵Caregiver Credit(同居する65歳以上の家族の支援に対する控除)、⑶Family Caregiver Credit(障害のある子どもやその他の扶養家族の在宅介護者への控除)の3つが統合され、2017年分の確定申告から適用が始まった控除です。これまで、 ⑵の控除が同居する高齢の家族全てに適用されていましたが、2017年分以降は、65歳以上でも、身体的・精神的な障害のない健康な人の場合、控除の対象外になったことが大きな変更点ですが、控除額の総額は、これまでと変わらないようです。
とにかく、介護にはお金がかかります。介護者の生活、ひいては介護を受ける人の生活が困窮することを防ぐためにも、公的支援を有効利用することも、介護の大切な一面です。
ガーリック康子 プロフィール
本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定