2017年10月12日 第41号

 先月末に行ったワークショップの参加者の皆さんに、私が投げかけた質問です。

 できる限り言わない、聞かれたら話す、周りの人には自分から話す、誰にでも話す、自分は認知症だと自己紹介する。介護経験の有無、介護者と認知症の家族との人間関係、認知症といわれた本人としての意見など、立場や状況の違いにより、答えは様々でした。

 認知症を巡る時代の流れは、近年、急速に変わりつつあります。認知症と診断される人が増え続けることが新たな社会問題になっていることを、多くの人が知るようになりました。また、認知症についての正しい情報もかなり浸透してきているようです。認知症に限らず、家族の病気、特に長く介護が必要な病気について、周りの人に話せるかどうかは、その病気が一般的にどの程度知られているか、または受け入れられているかにも左右されるでしょう。病気の種類によっては、口に出すこと自体がタブーとされていた歴史があるものもあります。状況は変わってきていますが、認知症も暫く前まで、「黙っておく」もののひとつでした。家に「呆けた人」がいることが他に知れてしまうと「家の恥をさらす」ことになるため、介護者が必要な助けを求められない状況を生んでいました。

 公表するかどうかは個人の選択です。しかし、家族や周りの人に迷惑をかけたくないとか、プライベートなことなので職場の同僚には知られたくないなどという理由から、公表しないことにメリットはあるのでしょうか? また、医師や専門家、誰にも相談せずひとりで頑張ることが、正しい診断や医療措置の妨げになってはいないでしょうか? 確かに、敢えて公表しなくても、かかりつけ医と専門医の介入により、医療処置を受けることはできます。しかし、それ以外の手助けを必要とするのであれば、何らかの形で地域との繋がりを保たない限り、必要なサービスをすべて受けることは難しいでしょう。結果的に、介護者がひとりで頑張ってしまい、介護が破綻してしまう負のサイクルの発端になり、そのサイクルを助長してしまいます。

 いずれにせよ、遅かれ早かれ、介護者ひとりではどうにもならない時が来ます。そうなった時に急に助けを求めても、すぐにサービス利用ができるようになるとは限りません。例えば、日本では要介護認定を受けない限り、介護保険サービスを利用することはできません。認定を受ける前に要介護認定調査が必要ですが、自治体により実施頻度が決まっているため、申請してすぐ調査が行われるわけではありません。認定後に、今度はケアマネージャーを探す必要があり、担当のケアマネージャーが決まって初めて、サービスが機能し始めます。また、BC州では、公立の介護施設に入所を希望する場合、主にソーシャルワーカーを通じて管轄の保健局内の施設への入所を申請し、順番待ちリストに名前が載ってから、空きが出るまで暫く待つことになります。空きが出た際、第一希望の施設ではないという理由で入所を断ると、待機期間は振り出しに戻り、リストの一番最後に改めて名前が追加されます。

 では、介護はひとりでできるのでしょうか。介護者が人間的な生活を営むには、完全にひとりで介護をするのは、肉体的にも精神的にも無理です。もともとは穏やかな性格の介護者でも、ひとりで抱え込んでしまうことにより、溜まりに溜まった介護のストレスや疲れが限界を超え、思い詰めた挙げ句、普通では考えられないような、取り返しのつかない行動に出る可能性があるのです。介護殺人や介護心中、介護自殺がその典型的な例といえます。ギリギリの状態になる前に、何らかの手立てを打たなければ、介護をする人とされる人が共倒れになります。そうならないためにも、介護者が認知症の人を介護していることを周りの人に話すことから、状況を変えていく必要があります。積極的に手助けを求めなければ、協力が必要なことが周りに伝わりません。力になってくれる人は必ずいるはずです。

 


ガーリック康子 プロフィール

本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定

 

 

 

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