2017年3月30日 第13号
認知症には、「4大認知症」と呼ばれる代表的なものがあります。それが、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症の4種類です。中でも群を抜いているのが、アルツハイマー型認知症ですが、その次に発症率が高いのが、レビー小体型認知症です。アルツハイマー型が女性に多いのに比べ、レビー小体型は男性に多く、女性の発症率の約2倍と言われています。認知症患者全体のおよそ5人に1人とも言われていますが、その症状はあまり知られていません。
レビー小体型認知症の原因は、レビー小体という蛋白質にあります。この蛋白質が、大脳皮質(随意運動、思考、記憶などの脳の高次機能中枢)や、脳幹(呼吸や循環機能などの生命維持中枢)に溜まり、発症します。原因となる物質が同じため、手足の震えや小股歩行など、パーキンソン病のような症状を伴います。
レビー小体型認知症の場合、アルツハイマー型認知症に比べ、認知機能にあまり変化がなく、徘徊や暴力などの周辺症状が少ないと言われています。物忘れ以外の特徴的な症状は、幻覚・幻視、鬱、目眩、失神、手足の震えやこわばり、小股歩行や緩慢な動作、大きな寝言など様々なため、診断が難しく、別の病気と誤診されることも少なくありません。誤診により症状が悪化するとも言われています。
誤診により適切な治療が受けられないことに加え、症状を改善するためにいろいろな種類の薬を服用することで、副作用も出やすくなります。例えば、幻覚を治そうとして抗精神薬を服用すると、薬の副作用のため、転びやすくなったり、嚥下(飲み込み)が悪くなり、生命予後に悪い影響を招く可能性があります。
誤診を防ぐためにも、早い時期の発見や正しい診断が重要になります。脳の血流を診断する画像診断法の一種、 SPECT (スペクト)という検査が、有効な検査方法のひとつです。レビー小体型認知症の場合、後頭部の血流が低下するという特徴から診断します。しかし、最初は認知機能障害が出にくいうえ、特徴的な症状も他の病気と間違えられやすく、一般に考えられている認知症とは異なります。ですから、本人の様子の変化に気をつけたり、レビー小体型認知症を正しく理解すること、特に、幻覚・幻視や大きな声での寝言を含む複数の症状に当てはまる場合は、専門医の診断を受けることが大切です。
ガーリック康子 プロフィール
本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定