2017年1月26日 第4号
もし、あなたやあなたの家族が認知症と診断されたら、どうしますか? 全くその兆候に気付いていなければ、そんなまさか、とすぐには受け入れられないでしょう。何かおかしいと思い始めていれば、やっぱり、と疑っていたことが現実になります。認知症になったら人生終わり、と絶望してしまう人もいるかもしれません。薬を飲めば治ると思っている場合もあるでしょう。でも、一体どうすればいいのでしょう。
「認知症」とは、他の病気により起きる症状や状態の総称で、病名ではありません。また、老化による物忘れとは異なります。認知症の中で、最も発症者が多いアルツハイマー型認知症が、全体のおよそ半数、次にレビー小体型認知症、脳血管性認知症が続きます。これらは「三大認知症」と言われ、全体の約85%を占めています。進行を遅らせたり、症状を改善する薬はありますが、今のところ、認知症の根本的な治療薬はありません。
日本やカナダのように、高齢化が進む先進国では、認知症が大きな社会問題となっています。2025年には、日本の65歳以上の人の5人に1人が、認知症と診断されると予想されています。アルツハイマー型認知症の場合、発症する人の多くが高齢女性です。カナダの例をとっても、72パーセントが女性です。また、あまり知られていませんが、比較的若くても認知症を発症します。64歳以下で発症する認知症を「若年性認知症」と呼びますが、中には30代で発症するケースもあります。若年性の場合も、アルツハイマー型が最も多いものの、発症は男性に多く見られます。
認知症が広く一般に知られ、正しい情報を得ることが容易になったとはいえ、未だに誤解や偏見はなくなりません。それを改善していくことが、認知症の正しい理解に基づいた、適切な介護につながります。認知症と診断されても、進行度に応じた生活の質が保てれば、本人も家族も納得のいく終末期が迎えられます。介護者や医療従事者の間だけでなく、地域のコミュニティーで、認知症についての意識の啓発、正しい情報の普及に務めることで、介護者が孤立せずに、地域のサービスやサポートを受けながら、認知症の人を介護できるようになります。まず、認知症を正しく理解することが、認知症の介護の第一歩なのです。
認知症のこと、あなたはどのくらい知っていますか?
ガーリック康子 プロフィール
本職はフリーランスの翻訳/通訳者。校正者、ライター、日英チューターとしても活動。通訳は、主に医療および司法通訳。昨年より、認知症の正しい知識の普及・啓発活動を始める。認知症サポーター認定(日本) BC州アルツハイマー協会 サポートグループ・ファシリテーター認定